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田原総一朗 「AIは人間の仕事を奪うのではなく、むしろ増やしていくのではないか」

田原総一朗さん30日毎日連載 Q14.日本の将来を不安視する声が多くなっているように思いますが?

『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

 Q14.日本の将来を不安視する声が多くなっているように思いますが?

 

 そういう声も多いようだけど、僕は将来は、明るいと見ている。なぜか。今、時代のキーワードは「イノベーション」。このところAI、人工知能が話題になっているでしょ。このブームは本物だと思う。
 これまでのAIブームは、1960年代と80年代の2回あったんだけど、いずれも途中で終わってしまっています。60年代のAIは汎用コンピュータが作り出されたこと。もちろん今のレベルとは比べものにならないけれど、当時としては計算がやたらと速くなった。それで今に人間の頭脳を追い越すと言われ始めたんだ。自衛隊が導入したF-104という戦闘機も、「最後の有人戦闘機」と称されたくらいだったからね。しかし、いくら計算力が速くても人間のような「判断力」を持つことはできない。それで立ち消えてしまった。
 80年代はパソコンが普及し始めた。すると、今度はやたらと大量の知識、まあ、データを貯めることができるようになった。例えば医学であれば病気とそれに対する治療法を蓄積すれば、医者と同じ仕事ができるのではないか。あるいは、法律の情報をたくさん与えてあげれば、弁護士と同じ働きができるんじゃないかと言われた。それで、知識を集めるという作業が盛んに行われた。いわゆる第5世代コンピュータと言われたものです。でも、こちらもいくら知識を集め、蓄積したところで、どれが必要で、何を活用すればいいのかの取捨選択、判断を下せるまでには至らなかった。
 そして現在、2010年代は第3次のAIブームが到来しているけれど、僕はこれこそが本物だと思っている。ディープラーニングなんていう言葉があるんだけど、膨大な情報を活用して、コンピュータが物質や物体を見分けられるようになってきている。これは機械的に学習ができるようになってきているんだけど、これが進んでいくと、やがてコンピュータは判断力を持てるようになってくる。
 まだ今は、子供程度の判断力なんだけど、やがてコンピュータが「自分で考える」ということができるようになるはずなんです。実は今年の5月に、オックスフォード大学の教授と野村総研の共同研究で、今後10から20年の間に人間の仕事の49%が代替できるということが発表されている。すると、人間の仕事が奪われるんじゃないかという不安も出てくるのも確かです。
 でもちょっと待て、と。産業革命の時は、職人たちが同じようなことを考えて、機械の打ち壊し運動が起きた。でも、実際は産業革命で仕事がどんどん増えた。僕は同じようなことが、これからの社会に起こると予想しているんです。

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明日の第十五回の質問は「AIはどこまで発展すると思いますか?」です。
 

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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