適度な自己中のすすめ【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第27回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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適度な自己中のすすめ【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第27回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第27回

 

【もう秋】

 

 草刈りはそろそろしなくても良いかな、という季節。落葉や毬栗や団栗が地面にちらほら目立ち始めていて、ときどき掃いたり吹き飛ばしたりしている。朝も夕方も暗くなって、気温も下がってきた。

 日本のニュースを見ていたら、台風のため停電になり家族で車中泊になった、と伝えていた。どうして車中泊なのかな、家の近くに崩れそうな崖でもあるのか、と想像したけれど、冷房が使えないからという理由だとわかった。まだそんなに暑いのか。もう十数年間、一度も冷房というものを体験していないので、すっかり存在を忘れてしまった。

 住宅が密集し、車も道路で渋滞し、それらがみんな、ずっと冷房されているわけだから、その分、外気は暖められる。冷房は、室内外でトータルすれば気温を上げる装置だということを、たぶん大勢の人が知らないのだろう。エネルギィを大量に消費して、夏をさらに暑くしているのだ。

 

サンルームの中では、ほぼ一年中ゼラニウムの赤い花が咲いている。夜に降った雨でガラスが濡れているけれど、日が上ると毎日晴天。一年を通して、昼間に雨が降ることは滅多にない。

 

文:森博嗣

 

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「無事」を重ねることが、人生の成功である。少し気をつけていれば、誰でもできる。ときどき予期せぬ不運が襲ってきても、また少しずつ無事を重ねて挽回していけば良い。勝たなくても良い。負けても良い。またの機会を待てることこそが、成功の価値なのである。(第35回「充実した人生に唯一必要なもの」より抜粋)

 

◉人生はプログラミング◉水を差しにくい社会◉話し上手と書き上手

◉老人になっても社会人である◉余計なものを持つことの価値

◉気持ちという質量◉「潔癖社会」純度上昇中◉ジェネラリストは存在しない?

◉どうなれば成功なのか?◉適度な自己中のすすめ◉アイデアを思いつける人

◉思いつきの手法◉新しい価値は無駄から生まれる◉頭は知識で肥満になる

◉楽しければそれで良いのか?◉効率か快適か、それが問題だ

◉自己利益が最重要な方針◉作るために必要なこと

◉一人でいることは、自由の象徴◉充実した人生に唯一必要なもの

◉AIが活躍する未来って?◉的確な質問をする能力

◉ネットのモラルはこれから◉フィクションを楽しむ条件

◉いつ死んでも良い生き方とは etc.

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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