2024年、世界は収拾がつかなくなっている【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」50
◆現実のない世界で現実を探る方法
わが国も例外ではありません。
岸田文雄総理は2021年、自民党総裁選に出馬したとき、「令和版所得倍増計画」なるものを提唱しました。
1960年、時の池田勇人総理が提唱し、かつ実現させた「所得倍増計画」の再現というわけですが、ほどなくして「所得倍増」は、文字通り所得が倍になることを意味するものではない、という話になる。
倍増は倍増にあらず、と来たのです。
さらに計画そのものが「資産所得倍増プラン」に変化する。
当然これも、文字通り資産所得が倍になることを意味するものではないのでしょうが、「所得」と「資産所得」では意味合いがかなり違う。
要するにゴマカシ、もとへ「何でもあり」です。
そして「何でもあり」は泥沼への道。
2022年、参院選に勝利した岸田総理は「黄金の三年間」なるものを手にしました。
向こう三年、2025年までは国政選挙がないため、推進したい政策を自由に推進できるという次第。
長期政権になるのではないかと見る向きまであったのです。
ところがどっこい。
参院選の直後から、自民党の少なからぬ国会議員が、韓国生まれの新興宗教・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)、およびその関連団体と関係していたことが判明。
統一教会の教義は多分に反日的ですから、由々しき問題です。
2023年になると、政治資金パーティ収入の裏金問題が追い討ちをかける。
のみならず、これらの問題への対処がみごとに生ぬるい!
またもや「何でもあり」なんですな。
「黄金の三年間」はどこへやら、岸田総理は支持率低迷に苦しんだあげく、自民党総裁選に再出馬できないまま退陣することになりました。
他方、国民の間では「どうしてこう、物事がうまく行かないんだ」という矛盾と苛立ちが高まっているように見受けられます。
あとはいつ、収拾がつかなくなるかですが・・・
なぜ、「何でもあり」がかくも蔓延してしまうのか?
これは重要な問いかけです。
もっとも、答えを見出すのは容易ではありません。
「何でもあり」の世界では、現実そのものが解体されているのです。
言い換えれば、「これが現実だ」と呼べるものがない。
存在しないものを分析できないのは自明の理。
現実のない世界で、現実を探るにはどうすればいいのか?
お分かりですね。
どう見ても現実ではないもの、「これが現実だ」という素振りを見せようとしないものに目を向けるのです。
つまり明らかな虚構(フィクション)に。
「どう見ても現実ではない」と言える以上、それらの虚構においては、「現実」と「現実でないもの」の境界がまだ残っている。
すなわち「何でもあり」には陥っていません。
ゆえに虚構の中から、いわば逆算する形で、現実をめぐる洞察を抽出することが可能なのです。
そのような虚構の一つとして取り上げたいのが、ロシアのインディ系(自主制作)映画作家、アレックス・ウェスリーが2021年に発表した『POST-APOCALYPTIC DESPERATION』。
SFホラー映画で、題名は訳せば『滅亡と絶望』になります。
ここから抽出される洞察とはいかなるものか?
この先は次回、お話ししましょう。
(了)
文:佐藤健志