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タリバン(アフガニスタン・イスラーム首長国)のカーリー・ディーン・ムハンマド経済大臣に単独インタビュー「アフガンは米国と中国、どちらを選ぶか?」

カーリー・ディーン・ムハンマド(暫定)経済大臣(2024年8月撮影)

 

 2024年8月、イスラム組織タリバンが首都カブールを奪還してから3年が経過した。前政権時代は深刻な問題になっていた汚職や薬物中毒者の問題について、タリバン暫定政権は積極的に取り締まり、アフガニスタン国内で着実に成果を伸ばしている。

 筆者は今年8月、アフガニスタン・イスラーム首長国(以下首長国)のカーリー・ディーン・ムハンマド(暫定)経済大臣に単独インタビューを行った。2021年8月にタリバンが政権を奪取してから、日本人記者の取材に応じるのは初めてになる。

 米国の傀儡政権による統治から脱して3年目を迎えるアフガニスタンの現状と将来について語ってもらった。

 

 

―― 3年前に政権を奪取してから、最も力を入れたことは?

 

 共和国政権(ハーミド・カルザイ大統領、アシュラフ・ガニー大統領時代)の間、私はカタールにいました。その間に2012年6月に国際会議に出席するため、京都の同志社大学へ行ったことがあります。その際、日本人の親切さに触れ、日本人に対して好印象を持っています。

 

2012年6月27日、同志社大学神学館で開催された公開講演会「アフガニスタンにおける和解と平和構築」。左から2番目がカーリー・ディーンムハンマド師(タリバン代表)。左端はイスラーム法学者の中田考氏。
2012年に同志社大学で行われた国際会議の様子。左から2番目がカーリー・ディーンムハンマド師(タリバン代表)。左端はイスラーム法学者の中田考氏。

 

 過去20年以上、アフガニスタンは米国とその傀儡政権によって〝占領されていました。米国はアフガニスタンの「復興」の名の下に巨額の資金を投入していました。ある調査によれば、1440億ドルもの資金を「復興」という名目でアフガニスタンへ投下していたのです。しかし、それによってアフガニスタンは構造的に変化することはありませんでした。

 例えばアフガニスタンの医療体制は今も貧弱で、大病を患った際には、国外の病院で治療を受ける以外に選択肢はありません。その際、自宅や土地を売るなどして、治療費を工面せざるを得ない人々が数多く存在するのです。

 農業分野についても、同様のことが言えます。近代的な農具、工作機械を持つことはできず、収穫した農作物を保管するための冷蔵設備も整備されていません。過去20年間もの統治の期間があったにもかかわらず、20年前とほとんど同じ方法で農業を行わざるを得ないのです。

 高速道路についても、早急な整備が必要です。高速道路は現在、破壊されているため、道路網の整備も喫緊の課題となっています。

 予算などの資金面についても、深刻な状況が続いています。これまでの米国による傀儡政権は国家予算のうちの70%までは海外からの支援に頼っていました。

 輸出入についても、厳しい状況が続いています。アフガニスタンの輸出金額が約7億ドルであるのに対して、輸入額は80億ドルにも及んでいます。貿易関係の不均衡も、アフガニスタン経済を悪化させている要因です。

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田代秀都

たしろ ひでと

ジャーナリスト

2001年神奈川県生まれ。大学在学中より、中東地域を精力的に取材。これまで、シリアやイラク、レバノン、アフガニスタンなどの国を取材・各種週刊誌などで発表。

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