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お酒とジャズを楽しむリゾート列車の旅

観光列車「越乃Shu*Kura」に乗る

リゾート列車「越乃Shu*Kura」(十日町に到着する列車を駅近くで撮影)

 ひょんなことから観光列車「越乃Shu*Kura」に乗ることになった。急な話だったのと一人旅なので、食事付きプランではなく、指定券1枚だけ。それでも、車内の売店でお酒や食事は買えるらしいので、ひもじい思いはしなくてすみそうだ。

 

 ともあれ、それほど早起きをしないで東京駅から上越新幹線とほくほく線に乗り継ぎ、列車の起点である十日町(新潟県)に向かった。のんびり街中を散歩し、余裕を持って、「越乃Shu*Kura」の座席に収まった。ディーゼルカー3両編成で、先頭の3号車が私の乗る座席車だ。発車までずいぶん時間があったので他の車両を見て回る。お隣の2号車がイベントスペースと売店のある車両、1号車がペアシートやテーブル席だ。

3号車車内

 

車内でのジャズ生演奏

 

 午後3時頃にゆっくりと十日町駅を発車し、まずは単線非電化の飯山線を走る。車窓に広がる黄金色の田圃がいかにも秋という感じだ。のんびり車窓を眺めていたいところだったが、2号車でジャズの生演奏があるというアナウンスがあったので、席を離れた。イベントスペースでは、ギター、キーボード、フルートからなるトリオが「A列車で行こう」などを演奏し、20分程の間、楽しませてくれた。ちらりちらりと窓の外に目をやりながらユニークな列車旅を堪能した。

蔵元による試飲会

 演奏が終わる頃には、信濃川の支流である魚野川を渡り越後川口に到着。ホームで記念撮影などをした後、列車は上越線に入った。今度は、同じイベントスペースで地酒の試飲会があるという。私は、日本酒は得意ではないが、酒がテーマの観光列車なので、取材のため再び出かけてみた。蔵元の人が、地酒の話をしながらPRを兼ねて、何種類ものお酒を透明なプラスチック製のお猪口に注いで配ってくれる。舐める程度だったが、3種類ほど試飲。気に入れば売店で瓶を購入することになるけれど、私はこの程度で充分満足である。もっと勧められそうになったが、酔いつぶれても困るので、そっと自席に引き上げた。

青海川駅で20分少々停車

日本海に面した青海川駅

 小千谷を経て長岡へ。ここで進行方向が逆転する。今度は、1号車が先頭になって出発した。宮内で上越線と分かれ、列車は信越本線を快調に走る。なだらかな山を越え、柏崎で小休止したあと、いよいよ車窓に日本海が現われた。海が線路に近づいたところで、青海川(おうみがわ)駅に到着。ここで20分余り停車となる。降りた上りホームに向いあった下りホームが海に面しているので、多くの乗客は階段を上下して長岡方面への下りホームへ向かう。確かにそちらのホームのすぐ真下は日本海、しかも夕方なので海に沈みゆく太陽がはっきり見える。車内では2回目のジャズ演奏が始まっていたが、プレイヤーも列車を降りて、海側のホームに移動して演奏を再開した。なかなか気がきいた演出である。

2回目の生演奏の続きは青海川駅のホームで開催

 発車時間になったので、一同列車に戻る。午後5時を過ぎ、少々お腹が空いてきた。発車後、再び売店を冷やかすと、沿線の名物の鯛飯があるという。さっそく注文して、2号車の立席カウンターで味わった。日本海の車窓を楽しみながらといきたいところだったが、しばらくすると列車は海を離れ内陸部を走る。しかも、まわりは薄暗くなってきた。

 

 食事が終わり席に戻ると、まもなく直江津に到着。ここでかなり降りる人もいるし、スタッフも半数近くが下車した。この先は、JRの路線ではなく、北陸新幹線開業後に第三セクターえちごトキめき鉄道となった旧信越本線に乗り入れるのだ。

 

 すっかり日が暮れ、闇の中を走り、高田に停まったあとは、終点の上越妙高駅。30分程で北陸新幹線「はくたか」に乗り継げば、午後9時過ぎには東京駅に戻れる。何とも手軽に日帰りでリゾート列車の旅が楽しめるようになったものである。

 

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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