世界を飛び回る旅客機のメイン材料!強さが鉄の10 倍なのに超軽量な日本の新素材
さらなる拡大に注目!日本のモノづくり力が結実した炭素繊維!
世界シェア70パーセント!!
近年、鉄の10倍の強度で重さが4分の1しかない新素材が話題になっています。数字だけではピンとこないかもしれませんが、何やらスゴイことは伝わってきますね。
その素材は炭素繊維。高い強度や軽さに加えて、熱や水、摩擦、引っ張る力にも強いため変形しにくく、耐久性や弾力性にすぐれている点も注目されている理由です。
とくに航空機分野では、2006年に「東レ」がアメリカのボーイング社と、最新の旅客機B787の開発のため、2021年までの16年間、炭素繊維を供給するという長期大型契約を締結し、世界中のメディアをにぎわせました。
B787では、もっとも高温になるエンジン部以外、機体の主翼から胴体、尾翼など主要部分のほとんどすべてが炭素繊維でつくられ、軽量化が図られています。
その結果、燃費が20%も向上しています。
炭素繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を低温で加熱し、次に不活性ガス(窒素やアルゴンなど)中で高温の蒸し焼きにします。
その後、余分な成分をさらに取り除くため、この蒸し焼きのプロセスを何度か繰り返すことで、90%以上炭素でできた高性能な炭素繊維となります。
じつは、炭素繊維の実用化は、19世紀末、アメリカの発明家トーマス・エジソンが発明した電球にまでさかのぼります。
この電球のフィラメントに使われていたのが、木綿や竹を焼いてつくった炭素繊維だったのです。
しかし、当時の炭素繊維の強度が非常に弱かったことや、タングステンのフィラメントの台頭で、炭素繊維は忘れ去られていきます。
その後、大阪工業技術試験所(現・産業技術総合研究所)の進藤昭男氏が研究を重ね、1961年にPAN系の炭素繊維の基本原理を発見します。
そして、1970年代に入ってから、日本の企業が開発に乗り出します。
日本メーカーは、アメリカの大手化学会社・デュポン社(テフロンの開発などで有名)など、欧米企業との開発競争に競り勝ち、現在、世界シェアのおよそ70%を占めるまでになっています。
この世界シェア70%の内訳は、「東レ」(世界シェア30%強)、「東邦テナックス」(世界シェア20%強)、「三菱化学」(世界シェア20%弱)の3社。低価格な中国企業の追い上げがあるものの、炭素繊維の耐熱性を高めるなど、さらなる高性能化を進めリードを広げています。メイド・イン・ジャパンの底力です。
また、炭素繊維は航空機分野のみならず、幅広い分野で活用されています。
当初は、強度と軽さ、弾力性を生かし、釣竿やゴルフクラブのシャフト、自転車(マウンテンバイクやロードバイク)のフレームなど、スポーツ分野で利用されていました。その後有用性が認知され、液晶フィルム製造用や印刷機用に使うカーボンロール、風力発電用風車の翼、高圧ガス容器、土木・建築補修材にまで炭素繊維が用いられるようになります。
さらに、1990年代後半からは自動車分野でも用いられるようになり、トヨタ自動車が2014年に発売した世界初の量産燃料電池車「MIRAI」には、東レとトヨタの共同開発による炭素繊維部品が使用されています。
日本のモノづくり力が結実した炭素繊維は、今後さらに活躍の舞台を広げていくに違いありません。