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中山美穂さんの死因は「熱中症」だった可能性も?年間150件の解剖に当たる法医学者の見解

鳥取大学医学部法医学分野・飯野守男教授に聞く

■中山さんは熱中症で亡くなった?

 続けて、今回の中山さんの死因についても見解を伺った。飯野教授は入浴中の死亡事例について豊富な知見を持つ。中山さんは「ヒートショック」になったという報道もあったが。

「ヒートショックではなく、熱中症の可能性も考えられます。実は冬場はお風呂場での熱中症死亡例が非常に多いんですよ。冬は夏場より、温かいお風呂に長く入りたくなる。その結果、体温が39度以上になって熱中症を発症し、意識が朦朧としてしまうんです。沈んでしまえば溺死してしまいます」

 驚くべきことに、鳥取県では年間約100人がお風呂場で亡くなっており、これは交通事故死(年間20人弱)の5倍にも及ぶのだという。特に12月、1月といった寒さに慣れていない時期に多発する、まさしく今が危ない時期なのだ。

「ただし、60歳以下での入浴中の死亡例はほとんどありません。今回の中山さんのケースは、年齢的に見ても少し特異なケースかもしれません」と飯野教授は指摘した。

■サウナより一人風呂が危ない

 いま、サウナブームだが、サウナもやはり危険なのだろうか。

「いえ。サウナではたいてい周りに人がいるため重大事故は起きにくいといえます。サウナに関しては、溺れる心配もありません。反対に自宅での入浴となると、家族と暮らしていてもその瞬間は一人になってしまいます。注意が必要です」

 専門家として気になるのが、近年の高機能な風呂だという。「外国人と話をしていると『なぜ日本の風呂では熱中症になるのか。ふつう湯は冷めるだろう』と不思議がられるんです。我々が普段便利に使っている、42度以上の高温でさえも維持できる追い焚き機能ですが、時として危険因子になり得るのです」

 飯野教授は「法医学の重要な役割の一つは予防です」と語る。「一例一例の死因を究明するだけでなく、似たような事例を分析し、どうすれば再発を防げるかを考える。それが『予防法医学』という新しい分野です」

 今回の悲報から、入浴の安全対策を考えさせられる。

取材・文:BEST T!MES編集部

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