職人肌のプロレスラーから“おふざけ路線”へ転身!田口隆祐が語る「自由」への挑戦 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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職人肌のプロレスラーから“おふざけ路線”へ転身!田口隆祐が語る「自由」への挑戦

■“おふさげチャンプ”が誕生した日

 長年のパートナーとの争いにけりをつけた田口は、第69代のIWGPジュニアヘビー級王者に輝いた。その試合後にTAKAみちのく(※12)、タイチ、エル・デスペラード(※13)に襲撃されるも、「オーマイ&ガーファンクル」、「チョベリバ」、「なんて日だ」、「シックスナイン」、「グッチョグッチョのベッチョベチョ」「激おこ牛若丸」など下ネタとギャグコメントで応戦、デスペラードをタジタジにさせる。

 理想のチャンピオン像を聞かれると、「もっと自由な、もっとふざけた田口隆祐を出していきたい」と答え、“おふさげチャンプ”田口隆祐が誕生した。

「『ワールドプロレスリング』で、試合よりも試合後のコメントのほうが長く放送されまして。コメントのほうが視聴率良かったんです。それでテレビ朝日のスタッフに『次の防衛戦で勝ったら、試合後のインタビューも、この間みたいにめちゃくちゃでお願いします』って言われたりして、それがきっかけですかね」

 周りを支える職人肌のプロレスラーから“チェンジ”した田口には、新たなファンがついた。ジャンピングヒップアタックなど、“ケツ”にこだわった攻撃をしたり、サッカーやラグビーの日本代表にあやかって「タグチJAPAN」を一人で結成をし、他の選手を勝手にメンバーに加えるなど、やりたい放題。

 

▲“ケツ”への異様なこだわりも見せる 写真:©新日本プロレス

 

 また、カードゲーム「キングオブプロレスリング」のゼネラルマネージャー兼演歌歌手・道標明に扮してCDデビュー。「道標明の人情酒場物語」という番組ではプロレス界の吉田類となり、酒場を放浪するなどリング外でも話題をばらまく。

 そんな仕掛けはどうやって思いつくのか。

「流行りを取り入れようと思っているので、普段から色んなところにアンテナを張っています。何か先取りしてプロレスに使えないかを色々と探っていますね」

 これだけ考えながら発信していても「変態お尻おじさん」扱いされてしまうが、それも本望か。最近では、テレビ朝日のプロレスバラエティ番組「新日ちゃんぴおん!」に出演するたびに下ネタを連発し、MCの三谷紬アナウンサーを閉口させている。

「期待に応えているだけです。そういうこと(下ネタ)を言う人だと思われているので、皆さんの期待通りにしているだけです。普段は下ネタなんて言わないので、夜寝る前には一人で泣いています。今日もまた自分で自分に嘘をついてしまいました」

 もしこの記事を三谷紬アナウンサーが読んでいたら、ぜひお伝えしたい。

 《下ネタばかりいう人ではありません。誤解を解きたいと言っていますので、チャンスを与えていただけますでしょうか》

※12 TAKAみちのく:世界最大のプロレス団体「WWE(当時はWWF)」で活躍したプロレスラー。現在は自身の団体「J.T.O」を主宰し、新日本プロレスに参戦している
※13 エル・デスペラード:新日本プロレス所属のジュニアヘビー級トップレスラーの一人。昨年開催したプロデュース興行「DESPE-invitacional(デスペ・インビタショナル)」は、チケットが即売り切れになるほどの人気を誇る

■「自分が楽しむ」で世界が「良くなる」

 田口は1979年生まれの45歳。氷河期世代ど真ん中だ。最後に、同世代の人たちを元気づけるメッセージをお願いしてみた。

「仕事でもプライベートでも楽しむことって大事だと思います。僕はプロレスラーという仕事をしているので、自分が楽しんでいる姿を人に見てもらって、その人も楽しくなれることを考えています。みんなに喜んでもらうためには自分が楽しむのが一番だと思うんです。

 今の世の中って暗くなるようなことばかりじゃないですか。それでも笑顔で明るく過ごしていれば、自分自身も楽しいし、周りの人も元気になると思います。

 ウキウキするような気持ちが連鎖反応で広がっていけば世の中も良くなっていくかもしれません。だから楽しく生きていきましょう」

 取材の場でもサービス精神旺盛に応じてくれた男は、これからもファンを喜ばせ続けるはずだ。時々はビシッとしたところを見せてくれれば、なお幸いである。

 

▲「自分が楽しめ」とメッセージ  写真:©新日本プロレス

 

取材・文:篁五郎

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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