人は何歳になっても未完成だ…「宅急便」創始者の人間観
【連載】「あの名言の裏側」 第6回 小倉昌男編(2/4)謙虚さが強さを生み出す
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ヤマト運輸は、監督官庁に楯突いてよく平気でしたね、と言う人がいる。別に楯突いた気持ちはない。正しいと思うことをしただけである。あえて言うならば、運輸省がヤマト運輸のやることに楯突いたのである。不当な処置を受けたら裁判所に申し出て是正を求めるのは当然で、変わったことをした意識はまったくない。
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納得のいかないこと、理不尽なことには、真っ正面から「おかしい」と主張する。気骨あふれるその姿は、非常に魅力的です。とはいえこの側面だけ見ると、強面でちょっと傲慢な経営者像が浮かんでくるように感じる向きもあるでしょう。
でも、小倉氏は一方で「自分は気の弱い人間」だと語っています。元来は気弱で、引っ込み思案で、恥ずかしがり屋であり、人前で喋るときにはたいへん緊張してしまう、と。
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「気の弱い人間がよく役人とケンカをしたものだ」と思われるかもしれない。しかしそこは経営者として、筋の通らない理屈で事業を妨害してくる人間を許すわけにはいかなかったのである。
自分が年配者になってみて思うのは、おそらく完璧な人間など、どこにもいないということだ。ただ、自分が完璧な人間だと思っている人はいるらしい。
そういう人は、どこかで勘違いをして、すっかり思いあがってしまっているのだろう。自己顕示欲が強く、自尊心も強く、自分がいうことはすべて正しいとさえ思っている節がある。まったくおめでたいことだ。
(『小倉昌男の人生と経営』より)
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“戦う経営者”という小倉氏の姿は、経営者としての責任感と、自分の弱さや至らない部分を自覚し、それを克服しようと真摯に取り組む謙虚さが生んだものだったのでしょう。
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人は何歳になってみ未完成のままである。(中略)そんな自分を見つめながら、謙虚さを失わないように生きていくべきだろう。
むしろ完成などしなくてもいい。完成すれば、それ以上進歩する余地がなくなってしまうからだ。
(『小倉昌男の人生と経営』より)
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なんとも、励まされる言葉です。