ふんどし一丁で歩くだけで人の価値観を変えることができる――1枚の布に情熱を注ぐ男たち
現在観測 第50回
・社会にとっての利益を目指すようになった
ふんどしに意義を見出してからは、活動もより世の中に喜ばれる形へと変わっていきました。「寛容な社会に自由な格好で好き勝手やらせていただいるんだ。必ず世の中にプラスの価値を生み出さなければならない」と責任を感じるようになったからです。
具体的には、より爽やかににこやかに歩くようになったり、バレンタインにはふんどしチョコを配って働く人々を応援したりしました。定期的にボランティアや地域の清掃活動などにも積極的に参加しました。やはり突飛な見た目をしている以上、やっていることはまともで、分かりやすく社会に良い影響を与えることでなければならないな、と。
・ふんどしがビジネスになる時
1年前の冬、趣味の領域でふん活を続けていた私の元に、スーツ文化を学ぶためイタリアに留学していた友人から、一本の電話が入りました。
「君がやっているふんどし活動、一緒にビジネスとしてやってみないか?」
彼はもともとスーツ文化を学ぶために単身イタリアに飛び込んだのですが、ヨーロッパ各国をふんどし一丁で回った経験から、海外でのふんどしの評価の高さに驚き、アパレルとしてのふんどしに可能性を感じたのです。
そして親友の私に事業化の提案を持ちかけてきたのです。
彼は今、会社の代表として一緒に仕事をしている星野という男なのですが、彼のストーリーはハフィントンポスト 日本版で紹介されています。
彼は、「ふんどしも伝統産業として良さを伝えれば世界にも売れるかもしれないし、何より見せ方・工夫の仕方で世の中を盛り上げることができる」と熱く語り、私も彼の話にとても共感しました。
正直それまでの活動で「自分は十分前衛的なことをやっている」という気になっていました。しかし、「飛び抜けた面白いことは趣味の範囲でやる」という考え方にとどまっており、「好きなことで稼いで生きていく」という発想には至らなかったのです。世の中ではそのような風潮が十分高まっていたのにもかかわらず。
私は自分の世界観の狭さを恥じ、「現状に満足して停滞してはいけない、常に視野を広げるべく挑戦し続けなければいけない」と気持ちを新たにしました。
・「ふんどし部」という組織が誕生
数ヶ月後彼がイタリアから帰国し、事業化に向けて本格的に活動をスタートしました。それまでは私個人の趣味でやってきましたが、今後は組織として収益を上げながら活動しなくてはいけません。初の試みで、何もかもが手探りの状態でした。
とはいえ気持ちだけは燃えていたので新年に向け何かしようと、大晦日にふんどしマン5人で高尾山の山頂まで登りました。雪の積もる中ふんどし姿で眺めた初日の出の美しさは今でも忘れません。
その道中、多くの方から「なんの部活ですか?」と聞かれたことから「ふんどし部」というネーミングが生まれ、当初の組織の名前となりました。そして今年5月に法人登記し、名前はそのままで「株式会社ふんどし部」を創業したのです。
起業してからはあっという間で、がむしゃらに走って半年間が過ぎました。オンラインで小規模にふんどしを売ることから始めて、今ではなんとか社員二人が食べていけそうなところには至りましたが、未だに課題だらけの現状です。
今は目の前のことで精一杯な毎日ですが、もがきながらも我々がふんどしビジネスとして何を成そうか、ふんどしでどのように新しい価値を創り出していくか、考えていることを述べさせていただきます。