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観光地に行かない男一人旅のススメ

現在観測 第51回

一人で行かないと「妄想」できない

 ここで一人で行く旅の魅力を考えてみる。誰かと旅行に行くと、その街での生活を考えることができなくなる。縁もゆかりもない街だ。きっと知り合いはいない。でも、友達が一緒だと「もし、この街に住んだら」という妄想にリアリティが生まれないのだ。一人だから話す相手もいないので、そのような妄想が生まれるのだ。

 カップルで旅行をしたら、と思うけれど、恋人と旅行に行くと、そんな妄想なんてしなくて、今日の夜の色鮮やかな桃色の妄想しかできない。それはそれで楽しいのだけれど、わざわざ旅先でしなくてもいいのではないか。いつもの生活の中でできることだ。むしろ行き交う女性を見て、あのような人と付き合うのかな、と妄想する方が楽しいのだ。知らない街で人生を送る妄想。きっとあの感じの女性はエロい! と一人で盛り上がるのだ。だからと言って声をかけたりはしないけれど。

 スーパーで買い物をしながら、住宅街を歩きながら、名前もないような公園のベンチに座りながら、そんな妄想をすることが楽しいのだ。そこで生活する人と同じ空気を吸いたいのだ。

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地主 恵亮

じぬし けいすけ

1985年福岡生まれ。「デイリーポータルZ」で活躍するライター。



「彼女がいる風の」写真が話題となり、



2013年末イギリスのガーディアン紙「世界一気持ち悪い男」第1位に選出。



2014年より東京農業大学非常勤講師。



著書にテレビドラマ化された『妄想彼女』(鉄人社)、



『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』(アスペクト)などがある。


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