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「トランプvs習近平」の戦争は勃発するか?
「チャイナリスク2017」の暴発はあるのか?
中国専門ジャーナリストが予測する未来シナリオ《第1回》

中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」

 私は習近平政権の今後について、かなり厳しい見方をしている。従来の集団指導体制であれば、総書記兼国家主席兼中央軍事委員会主席は二期一〇年の任期が普通だ。二〇一七年秋の党大会で最初の任期の五年が終わり、順当ならば次の五年も習近平が総書記、国家主席、中央軍事委員会主席を継続することになる。同時に二〇一七年秋の段階で、二〇二二年以降に誰を総書記の座に就けるのかを見越した候補人事の選定というのが進んでいなければならない。

 だが二〇一六年夏の北戴河会議で本来話しあわれるはずのポスト習近平人事はまったく噂にならず、それどころか習近平は自分が三期目も総書記を続けるつもりであるという情報がAFPなど一部メディアで流れはじめた。

 つまり習近平がこれまでの共産党集団指導体制を崩して、自分が長期政権に就く独裁体制をつくろうとしているということである。習近平が集団指導体制の政治局常務委員制度と六八歳引退という不文律を廃止し、自分の長期政権をつくろうとしていることはかねてから香港メディアも報じていたし、私も党中央に近い知識人、メディア関係者たちから聞き及んでいる。

 だが、習近平が長期独裁体制を敷くために最低限必要な軍権の掌握とメディアの掌握ができているかというと、二〇一六年秋の段階では、まだできていない。そして習近平が八月に打ち出した「共産主義青年団改革」プランは、政敵である団派の母体組織の影響力をそぐことが目的の権力闘争だが、これを実行するにあたり、おそらく李克強はじめ団派の政治家および官僚組織の強い抵抗を受けるだろう。

 こうした権力闘争の激化の末、二〇一七年秋の人事で習近平が総書記の座を追われる可能性もゼロではないと考えている。少なくとも習近平の独裁体制確立を阻止しようという党内アンチ習近平派がこのまま黙っていないのではないだろうか。

 

習近平の引退と新世代の台頭

 

 こうした権力闘争の激化の結果として予想される一つ目の未来は、習近平の引退である。あるいは事実上の失脚というべきか。つまり政治局拡大会議などで引退を勧告され、それに抵抗できず辞任する可能性である。私は、これが中国にとって一番、平穏に今の政治の方向性を軌道修正でき、国際社会にとってもベストな結果につながるのではないか、と考えている。

次のページ「新世代の台頭」によってゴルバチョフのような政治改革者が出てくる可能性が強い?

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