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チームの勝利と大谷翔平という「宝」をどう使い分けるのか。日ハム・栗山監督が考えていたこと

『「最高のチーム」の作り方』を上梓した栗山英樹監督、その哲学に迫る!

 MVPを獲得し、WBC(ワールドベースボールクラシック)2017でも主戦として期待がかかる大谷翔平。今シーズン、2桁勝利、20本塁打と「二刀流」を見事な数字を残した。
 しかし、仮にこの数字が残ったとしても、チームが日本一に輝かなければ「二刀流の意味がない」――栗山英樹監督の先日発売された新刊『「最高のチーム」の作り方』でそう説いている。
 野球ファンが注目する大谷翔平の「二刀流」。しかし、だからこそ指揮官・栗山英樹は細心の注意を払い起用法を模索、考え続けた。
 大谷翔平という日本球界の宝をどう使うべきか。
 チームの勝利のために何を考えるべきなのか。
 書には、今シーズン栗山監督がいかにして「二刀流」と付き合ってきたか、プランニングしてきたかが詳しく記されているが、その哲学は入団以降変わっていない。
 ここではその思考の一端が垣間見れる、栗山監督の2015年シーズンにおける「言葉」を、著書『未徹在』より紹介する。

 

『大谷の一挙一動には、いつも周囲の視線が注がれている。だから監督と会話している姿を目撃されると、必ずあとでそのことを記者に質問されるのだろう。それが面倒なのか、あるいは単に僕のことが苦手なのか、いずれにしても人前ではよっぽど話しかけられたくないと見えて、彼だけはいつも決まって逃げていく(笑)。』

『ただ、これだけはいえる。「本当に誰も歩いたことのない道を歩きたい」という彼の言葉は、紛れもなく大谷翔平の本質を示す真実の言葉であり、これからも堂々とその道を歩いてゆくに違いない。こっちはこっちで、そのために全力を尽くすだけだ。』

『大谷と交わした約束は、彼との約束というよりも、むしろ自分との約束だったのかもしれない。「責任があるんだ」という言葉は、そのままこちらに返ってくる。いろんな夢がある中で、絶対にまずはファイターズでやるべきだと信じていたし、そうさせたわけだから、本当にファイターズに来てよかったと言わせないと、それはウソをつくことになる。』

『これは記者にも内緒にしてきたことだが、今年(編集部注・2015年シーズン)、先発の大谷が崩れ、試合を落とした日の夜、彼からある意思表示があった。悔しくて悔しくて、どうにも我慢できなかったんだろう。「もしチャンスがもらえるなら、明日も使ってほしい」と。二刀流で勝負している大谷だが、それを続けていくためにも登板した翌日は完全休養日と決めている。それはチームの決め事であり、当然、本人も認識していることだ。それがわかっていながら、ピッチャーとしてやられた分、明日、すぐにでもバッターとしてやり返したい、チームに貢献したい、という気持ちの現われだった。気持ちはわかるが、それはできない。理由は、チームの約束事だからというだけではない。』

『今年の前半戦、指名打者としてスタメン出場した際の成績は思いのほか振るわなかった。それはそれで正当に評価しなくてはいけない。そして、何よりも天下を取らせるために、いま、彼には我慢を経験させられる最後のチャンスだと思っている。大谷翔平だから、出たいときに試合に出られるとは思わせたくない。自分の思った通りにすべてはならないということを伝えておかなければいけない。』

『いつかこちらが頭を下げて、投げた次の日に「出てくれ」と頼む日がくるかもしれないが、いまはまだその時期じゃないと判断した。』

『監督にとってもちろん勝ち負けは重要だ。しかし、選手のことを思えばこそ、ときには優先順位を入れ替えてでもしなければならないことはある。』

 この言葉より一年を経て、見事、「日本一と二刀流」を成し遂げた。
『「最高のチーム」の作り方』にはこうある。
「チームが日本一という結果を残したことで、大谷翔平の二刀流もようやくその真価を示すことができた。
「二刀流はチームの優勝のためでなければ意味がない」
常々、彼に言い続けてきたことだ。
二刀流の使命はそれだけにとどまらない。
野球ってこんなにすごいんだ、こんなに面白いんだと、たくさんの人たちに感じてもらうため。つまりそれは「野球のロマン」を体現することであり、そうでなければあんなに大変な思いをしてまで取り組む価値はない。」
 今シーズン、そのすべてをやってのけた栗山イズムが、来年以降どのような形を見るのか。そして大谷翔平という稀代のスターはどこまでいくのか。
 野球ファンには想像するだけでたまらなくなるようなロマンがある。

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