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「宇宙の仕事で生きるものはビジネスの世界でも生きる」宇宙飛行士・大西卓哉さんの“コミュニケーション力”とは?

独占インタビュー! 元パイロットならでは。宇宙飛行士・大西卓哉さんの仕事術②

昨年、4ヶ月にも渡るISS長期滞在ミッションを成し遂げた、大西卓哉飛行士。その成功の陰には、JAXA管制官をして「準備の鬼」と言わしめた、徹底的な準備があった――。そしてそれを生かしたコミュニケーションの技術とは? ビジネスマン必読、宇宙飛行士の仕事術。

宇宙飛行士が大事にしている「伝え方」

 

――大西さんは宇宙飛行中、かなり地上の管制官との連絡を密に行っていたそうですね。なにか印象に残っているやりとりはありますか。

 小動物の飼育ミッションです。それはマウスを12匹打ち上げて宇宙ステーションで35日間飼育し地上に返す、という世界初の試みが色々と詰まったミッションでした。しかし、いざ宇宙でやろうとすると中々地上で想定したやり方では上手くいかない。それを日々、地上の管制官と連絡をとりながら「このやり方は宇宙ではあまり上手くいっていないからこのやり方に変えましょう」と、手順書から離れてリアルタイムでやりとりしていました。

 例をあげると、マウスのエサを押し出すカートリッジが詰まってしまったトラブルです。無重力状態で浮き上がった食べカスでカートリッジを押し出す部分が詰まってしまっていたのです。その様子を地上がちゃんとモニターしていたので、指示に従って私がエサのカートリッジを交換したり、詰まったカスを掃除したり……。これは一例で同じようなトラブルがほぼ毎日ありました。たいてい自分が寝ている間にまた新しい問題が起こっていたり、いま起こっている問題に対して地上で不具合対策会議が行われているので、それを踏まえて「どうすればいいのか」という指示を毎日のように仰いでいました。

――時には手順書のマニュアルから離れる場合もあるということですね。大西さんは地上とのコミュニケーションでどんな点を意識していたのでしょうか。

 我々の仕事は些細な変化も「まあいいか」と自分で判断せずに必ず地上に伝えることです。例えば科学実験で言えば地上にいる研究者の方の目となり耳となり鼻となり、「あれっ?」と思ったことがあれば報告する。実験の“分析”や”考察”は地上の研究者の仕事です。

 またこれは結果的に、なのですが、連絡をする相手はリードフライトディレクターという地上の管制官の実務責任者に窓口を一元化していました。地上の他の人にはその方から情報を展開してもらっていました。伝える相手が同じなのでコミュニケーションがブレない。まあこれには一長一短あると思います。

 さらに伝え方ですが、私はいま言ったように電話でのコミュニケーションがほとんどでした。いま起こっている現象に対して早く伝えることができる。本当は面と向かってというのがベストだと思いますが、宇宙空間でそれはできないので電話を使っていました。毎朝、管制官と電話をすることで地上の雰囲気を知れるのもよかったですね。距離的にものすごく離れて仕事をしているので、地上の情報ってどうしてもそういう所からしかわからないんですよね。

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大西 卓哉

おおにし たくや

JAXA宇宙飛行士。前職は旅客機パイロット(全日本空輸ボーイング767型機副操縦士)。



2016年7月~10月、ISS第48次/第49次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに約113日間滞在。



滞在中は、日本人初のシグナス補給船のキャプチャを遂行。「きぼう」日本実験棟船内に新たな利用環境を構築するとともに、様々なミッションを実施した。


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