指揮官栗山英樹が心を動かされたベテランの一言
『「最高のチーム」の作り方』を上梓した栗山英樹監督、その哲学に迫る!
■矢野謙次が切り札であるゆえん
思えば2015年、マリーンズと戦ったクライマックスシリーズのファーストステージで、チームに貴重な1勝をもたらしてくれたのは、シーズン途中に加入したベテランの矢野謙次だった。
1点を追う7回に代打で出場した矢野はそのままレフトの守備につき、8回表、2アウト1塁という場面で、抜ければ確実に1点を失う左中間への打球を、全力疾走でもぎ取った。
そしてその裏、1アウト2、3塁のチャンスで2度目の打席が訪れ、値千金の2点タイムリー。それが決勝点となった。
なぜ、あの打球を捕ることができたのか。なぜ、あの場面でヒットを打つことができたのか。矢野謙次という選手には、能力さえも支配し、技術さえも凌駕する気持ちの強さを感じずにはいられない。
野球への愛情の示し方という点で、若い選手たちにとっては生きた教材となるような選手だ。
その矢野が、今年(2016シーズン)は古傷を抱える右ヒザの状態が悪く、開幕に出遅れた。
それでも、代打の切り札的存在としてチームにはどうしても必要な戦力だったので、満足に走れる状態ではないことは承知の上で、一軍に上げる旨を本人に伝えた。
すると、矢野はこう言ってきた。
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