春に食べるあんこ餅は「ぼたもち(牡丹)」、秋は「おはぎ(萩)」、では夏と冬は?
彼岸といえばあんこのお餅! 季節によって変わる呼び方の由来とは?
春分の日は「お彼岸」のド真ん中
今年は春分の日が月曜日になったので、三連休となる人は多いだろう。これを利用して旅行を楽しむこともあるだろうが、この時期は「彼岸」である。ご先祖さまを供養する日ということは、日本人なら覚えておきたい。
そもそも彼岸とは、春分の日または秋分の日+前後3日の7日間のこと。仏教が由来でありながら日本独自の風習で、神道と融合したことで生まれたともいわれている。
彼岸とは死後の世界である「あの世」のことで、真西にあるとされている。一方、現世の「この世」は此岸といい、真東にあるとのこと。春分・秋分の日には太陽がこの両者を通ることから、彼岸と此岸が通ずる日とされている。
それに、春の種まきと秋の収穫が重なって、豊作を祈る意味も込めて先祖供養をするようになったのではないかという説が有力なようだ。
彼岸といえば、あんこのお餅をお供えするのが一般的だが、その呼び方には「おはぎ」と「ぼたもち」がある。それぞれの花が咲く時期になぞらえて名づけられており、春は「ぼたもち(牡丹)」、秋は「おはぎ(萩)」と呼ぶことが多い。
あんの形態にも違いが見られ、小豆を収穫する秋は皮まで食べやすいので粒あんに、春はかたくなるのでこしあんにするという。しかし、米粒の状態や、小豆と黄な粉によって呼び分けるなど、地域によって差があるため厳密な区別はない。
この複雑な呼び方問題、じつは春と秋以外にも別名が存在するのをご存じだろうか。夏は「夜船」、冬は「北窓」というのだとか。花には関係ない名称だが、非常に風情のある由来が隠されている。
ぼたもちは、餅とはいえ杵を使わずに作ることができる。音がしないのでいつ作ったかわからない(搗(つ)き知らず)ということと、夜に船が到着しても暗くて時間がわからない(着き知らず)をかけて、「夜船」という名が付けられた。
一方の「北窓」は、北向きの窓からは月が見えない(月知らず)にかけられている。同じものでも、季節によって呼び方を変えるとは、なんとも趣き深いではないか。
こんなにも情緒あふれる名称なのに、米の状態については物騒な名前が付けられている。米の形状がわからなくなるまで搗いたものは「皆殺し」、米粒の形がわかるものを「半殺し」というのだ。
花や月になぞらえたかと思えば、殺人現場を彷彿させる表現をも織り交ぜてしまう。そのギャップに驚かされるが、日本人はそれだけ表現力が豊かな民族といえるのかもしれない。