お名前は「頂戴」できるのか? 第一印象を決めるのはやっぱり「言葉遣い」
言葉遣いの基本は「敬語」 押さえておきたい敬語の実例 ③
名前を「頂戴」されても困ります
何かを申し込む際に、受付担当者から「お名前を頂戴できますか?」と言われた経験はないでしょうか。
ごく当たり前に使われているので、違和感を覚えない人が増えているようですが、「へんな日本語」「言われるたびにイラッとする」という人もいます。
「頂戴できますか?」の正しい使い方は、「お茶を頂戴できますか?」とか「申込用紙を頂戴できますか?」といったもの。つまり、「頂戴できますか?」というのは、「○○をください」を丁寧に言ったものなのです。
ということは、「お名前を頂戴できますか?」では、「あなたの名前をもらえますか」「あなたの名前をください」という意味になってしまいますね。
落語や歌舞伎などであれば、「師匠の名前を頂戴し…」という言い方も間違いではありません。しかし、一般の人が名前を誰かにあげたり、誰かからもらうということはありませんから、「お名前を頂戴」という言い方がヘンだというのがわかるでしょう。
この言葉は「バイト敬語」の一つとして、よく耳にします。バイト敬語とは、レストランやファーストフード店、コンビニなど、アルバイト店員が多い業界で言葉遣いをマニュアル化したもの。その中に、間違った言い回しが定着していて、日本語の乱れにつながると言われているものです。
もし、相手の名前を教えて欲しいのなら、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」、「お名前を教えていただけますでしょうか?」「お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」というのが正しい日本語です。
あるいは、もう少しシンプルに、「お名前を教えていただけますか?」「お名前をお聞かせください」といっても大丈夫です。
また、「おそれいりますが」と、前置きをしてから聞くと、より一層丁寧な印象を与えられます。
実は、この「お名前を頂戴できますか」は、「お名刺をちょうだいできますか?」がごっちゃになってできた新語だとも言われています。
同様に「お名前をいただけますか?」も間違いなので覚えておきましょう。
■お客様の名前を伺う場合は
× お名前を頂戴できますか
〇 お名前を伺ってもよろしいですか
× お名前をいただけますか
〇 お名前を教えていただけますか
【ポイント】名前は、あげたり貰ったりしない
【『一言で印象が変わる さすがと思われる話し方』より構成】