機動破壊炸裂!ホームスチール、重盗…… 健大高崎の強さの秘密に迫る
「走力」で高校野球を牽引し続ける健大高崎が取り組むノート
コーチの「父親」が作った「機動破壊」という言葉
もちろん、ただ走塁を強化するという指針を打ち立てたのではない。あくまで『日本一の走塁への意識』を本気で徹底したことで、わずか1年で初の甲子園出場を掴むことができたのだ。
そこには、青栁監督が全幅の信頼を置く、コーチ陣の存在も大きかった。生方啓介コーチ、葛原毅コーチをはじめ、外部からの指導者も含めると10名近くのスタッフが健大高崎野球部を支えている。青柳は言う。
「今は技術的なことは、もうコーチに任せています。バッティングは生方コーチ、ピッチングは葛原コーチなど、スタッフの中でも役割分担しています」
その中で、『日本一への走塁の意識』を選手たちに身に付けさせるために、大きく貢献したのが当初より走塁の指導を担当していた葛原コーチだ。葛原は本格的にチームに走塁を導入するため、研究を進めていった。
実は、「機動破壊」という言葉を生み出したのは、葛原コーチの父・美峰氏だ。葛原美峰氏は、愛知県の杜若(とじゃく)高校などで監督を務め、現在は健大高崎の外部コーチとして指導に携わっている。葛原親子が、健大高崎の機動破壊の原型を生み出していったといっても過言ではない。葛原コーチは言う。
「やるからには、機動破壊の神髄を考えなきゃいけない。ただ選手が盗塁数にこだわるだけだったら、それは数字に泳がされているだけ。盗塁数を重ねたところで勝利につながるかどうかなんて分からない。だけど、盗塁を印象付ければ、周りがすごく警戒してくれるので、たとえ、走らなくても相手を苦しめることが出来る。そこも含めての機動破壊なんです」
葛原コーチは言葉を続ける。
「走塁は形で教えちゃダメ。その過程の部分で、なぜそうなのかを言わないと選手たちは理解していきません。こういうプレーが出たら、こうするんだけど何故か分かるか?その裏を返して、こうなんだよといった概念を分かって取り組んでもらわないと絶対に身につかないんです」
チームで走塁と本格的に向き合うと決めてから、走塁の極意、そして秘策を徹底的に突き詰めて研究してきた葛原コーチだからこそ語れる言葉だ。
【健大高崎、履正社、静岡……野球ノートに書いた甲子園1~4とは?】