「日本の普通は世界のすごい! 福島の酒蔵・人気酒造に酒文化を聞く」(前編)千葉麗子×遊佐勇人(人気酒造社長)×倉山満
千葉麗子『ママは愛国』×遊佐勇人(人気酒造社長)×倉山満 (前編)怪獣がつくる純米大吟醸?
私の最新刊『ママは愛国』では、第1章で「日本の普通は世界のすごい」をテーマに、私の経験を織り交ぜて、日本が持つ豊かな文化について触れました。
今回は、監修の倉山先生と一緒に、私の郷里である福島県の酒蔵・人気酒造株式会社の遊佐(ゆさ)勇人(ゆうじん)社長をゲストに、福島のこと、日本の食文化の一つである日本酒のことについて、お話を伺いました。
遊佐さんは、私が出演していた『ジュウレンジャー』を作った東映に在籍されていたこともあるという経歴の持ち主です。
その後、現在の蔵元としてのお仕事に移られ、震災があった2011年にウルトラマン基金の商品として「人気一 地球侵略 純米大吟醸」などユニークな商品を生み出されているほか、海外での日本酒販売のプロモーションも手掛け、まさに世界がすごい!と絶賛する日本酒文化を送りだす活動をされています。
■郷里で講演会
千葉 覚えてますよ、講演会をやったの。まだ二十歳のころでした。仙台でしたっけ?
遊佐 そうです。酒造組合の東北青年酒造協議会といって、46歳定年の青年部主催の講演会でした(笑)。
千葉 あ、そうだったんですか。それでみんな若かったんだ。
倉山 千葉さん、そういう仕事もされてたんですね。どんな話をされたんですか?
千葉 あのときはマルチメディアと言っていて、ITという言葉がなかったんですよね。だから、どういうふうにインターネットを自分たちの事業を組み込むか、HPを作るかというような話をさせてもらいました。
遊佐 東北の酒蔵100軒くらい集まったんじゃないかなと思います。いつも堅い話ばっかりなのに、千葉さんが来てくれて、とても明るく楽しかったのを覚えています。
マルチメディアの話よりも、芸能界にいらっしゃったのに、起業されて、全く違う世界で苦労してここまで新しい商売を始めたっていう話の方が印象深くて。社長になって、会社作って、そんなリスク負って、そんなことまでしなくてもいいじゃないかって、普通、思うじゃないですか。
倉山 会社を経営されているから余計にそう思われたんですね。
遊佐 大体、僕ら、酒造というのは世襲ですから。千葉さんみたいに、起業した人がいないんですよ(笑)。
千葉 そうなんですか!
遊佐 千葉さんの講演をお世話したころは、親の会社の社長という立場だったんです。
倉山 というと、今は違うんですか?
遊佐 幸い、うちの親と兄弟が元気なので、10年前に親の会社をやめて、今の人気酒造を作ったんです。酒造の世界で起業できたのは僕が初めてなんですよ。他はみんな世襲なので。千葉さんの話を聞いた後のことです。
■「特撮」なご縁
倉山 先日、特撮評論家の切通(きりどおし)理作(りさく)さんと特別番組を収録しているのですが、遊佐さんも特撮にご縁が深いそうで。
遊佐 はい、今の仕事をする前は造形が好きで、東映で美術スタッフをしていました。
倉山 スケバン刑事(でか)1のときに東映に入られたそうですね。私、『大間違いのアメリカ合衆国』(小社刊)で、その話を書いてるんですよ。
遊佐 何と! 特撮全般お詳しいとは伺っていましたが、そんなところまでご縁があるとは!
倉山 戦隊ものの方は参加されていたのですか?
遊佐 応援で何回も現場に行って手伝いをしていました。当時はまだ新人でしたから。
千葉 私が出ていた『ジュウレンジャー』はメインが東條(とうじょう)(昭(しょう)平(へい))監督で、あと小笠原(おがさわら)(猛(たけし))監督、坂本(さかもと)(太郎(たろう))監督、雨宮(あめみや)(慶(けい)太(た))監督がいらしたのですが、ご存じの方はいらっしゃいますか?
遊佐 坂本監督とはずっと一緒にやってました。
倉山 ずっと東映の戦隊の監督をされている坂本監督と!
遊佐 それこそスケバン刑事とかあの辺から、一番長く仕事をした方ですね。お元気なのかな?
千葉 お元気ですよ!年末、電話でお話したばっかり。その頃はずっと『ママは愛国』の詰めの時期だったので残念ながらお会いできなかったんですけど。
遊佐 実は、坂本さんがハリウッドにいるときに、友人から一緒に坂本さんに会いに行かないかって誘われたことがあったんです。でも、その時はもう酒造の仕事を始めていたのでハリウッドには行くことができなくて。今になって後悔してます。
千葉 そうなんです。一人で撮ってきたよっておっしゃってました。向こうのやり方は合わなかったようで、やっぱり日本が一番だとおっしゃってましたね。本でも書いたみたいに、私もアメリカのやり方で合わない部分も多かったので、「やっぱ、そうでしょ~!」って盛り上がっちゃいました。
■東日本大震災とウルトラマン基金
倉山 ウルトラ怪獣シリーズのお酒がずらっと並んでいるのですが、すごいですね。
遊佐 2011年の東日本大震災後に円谷プロが被災した子供たちのために活動するための基金(ウルトラマン基金)を作ったのですが、その資金のために商品化したものなんです。
倉山 やはり福島県、ウルトラマンの生みの親、円谷英二氏の郷里ということでですよね。でも、遊佐さんはずっと東映にいらしたのですよね?
遊佐 そうです。実は、東映に入る前にご縁のあった方が円谷プロのイベントの責任者になっていたんです。その方と震災から間もなくして偶然会いまして、円谷英二の地元に近い酒蔵で商品を作りたいんだけど、遊佐君、近くなかった?という話から始まりました。
倉山 でも、こういう商品は商売としては難しいと聞きますが。
千葉 え~!すごい!!(笑)
遊佐 ええ、成功例はほぼ皆無に等しいですから。
日本酒というのは、本来、味とかブランドで売るものなので、それ以外の要素で商売をするものではないんですね。
だから、最初はやっぱりヲタク発想はダメだなと思っていたんです。「こんな怪獣のキャラクター付けたって売れないよ」と。
そうしたら「じゃあどうやったら売れる?」と聞くので、「怪獣がウチの酒蔵に来て、酒を造ったっていうんだったら飲みたいっていう人いるんじゃないか」って答えたら、ある日、本当に宇宙人が3人もやってきて。
倉山 それは本気ですね!
遊佐 ええ、それで、僕も真面目にやらなきゃだめだなと思って。それでストーリーを添えて、最初に出したのが「地球侵略」です。
千葉 それがヒットしちゃったんだ! すごいですね。だって、今、日本酒だけじゃなくて、梅酒や柚子酒もあるし、ワインに焼酎まであって。
遊佐 「地球侵略」が売れたので「ダダの梅酒」を造って、「純米総攻撃(50周年モデルは2017年限定)」とか造ったら、ますます売れて(笑)。それで、結局、今のような状態になりました。
倉山 パッケージのキャストが豪華すぎです。最初からメフィラス星人、ガッツ星人、メトロン星人とか、使い過ぎじゃないですか!(笑)
遊佐 まさかここまでラインナップが増えるとは思っていなかったので(笑)。
後編に続きます。
※本ページで取り上げた商品の売上の一部は、ウルトラマン基金を通じて子ども達の未来を創る為の活動に役立てられます。
「ウルトラマン基金」(http://www.ultraman-kikin.jp/)