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ミサイルに搭載可能!? 北朝鮮が1960年代から用意してきた化学兵器

『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』 第6回

韓国が赤化消滅する日は来るのか――元韓国国防総省北朝鮮情報分析官であり、元外務省主任分析官である佐藤優氏との緊急対談した『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』を上梓するなど、朝鮮半島情勢に詳しい高永喆(コウ・ヨンチョル)氏に、今後の動きをどうみるのか、情報分析のプロの視点から話をしていただいた。

世界3位の化学兵器保有国である北朝鮮

 安倍晋三首相が4月13日の参院外交防衛委員会で、北朝鮮は「サリンを弾頭に付けて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」と述べました。

 日本のマスコミは、日本政府が初めて北朝鮮の化学兵器保有に言及したように伝えましたが、韓国国防省が発刊した『国防白書2014』には、すでに北朝鮮は咸境道の清津、平安北道の新義州など8ヵ所に化学兵器生産施設を持っていると分析し、生物兵器の生産施設は平安北道の清州など3ヵ 所にあると報告しています。

 この白書は公開されているものであり、日本政府はもちろん、マスコミも見ようとすればいつでも読めたはずです。それなのに今さら北朝鮮の脅威を煽るような発言や報道は、いよいよアメリカによる北朝鮮への武力行使が行われた場合に正当化する布石かもしれません。

 武力行使といえば、カール・ビンソンを中心とした空母打撃群が韓半島周辺に向かうと伝えられた後、実はインド洋に向かっていたことが判明しました。こういったブラフ、つまり違った情報を流して相手を動揺させるのも、インテリジェンスの世界ではよくあることです。

 さて、北朝鮮は金日成の指示で1960年代初頭から化学兵器開発を着手しました。目的はもちろん戦争で使用して、効率良く敵の戦力を殲滅するためです。そして1980年代からは本格的な生産を始めています。韓国や国際機関では、北朝鮮軍の備蓄した化学兵器はサリンガス、タブンガス、マスタード、VXガスなどは15種類であり、最大5000トンを保有していると推定しています。この量はロシア、アメリカに次いで世界第3位の化学兵器保有国ということになるのです。

 また、もし北朝鮮が武力による赤化統一戦争を企て、サリンガス1トンをソウル都心部の7・8平方㎞の範囲に散布した場合は、20万人以上の死亡者が発生すると推定されています。サリンガス1トンは、38度線に配置された放射砲3~5門から発射できるので、十分に可能です。

 ちなみに、ソウル首都圏を狙う北朝鮮軍 放射砲は300余門に達しているのです。もし、アメリカが北へ断定的な武力行使を行うのであれば、まず、この放射砲群を叩いておかなければいけません。そうしなければソウル市民はもちろん、在韓の米軍関係やアメリカ人、在住日本人にも多大な犠牲者が出てしまいます。

 安倍首相がわざわざ言うまでもなく、ミサイルの弾頭にガス兵器を搭載することは容易です。それで在日米軍基地が攻撃されれば、基地のみならず、周辺にも多大な被害が出ることでしょう。アメリカは「北朝鮮が核爆発実験を行ったら、あらゆるオプションを用意している」と言っていますが、核弾頭の小型化には時間がかかります。

 ですからまず、化学兵器はもちろんですが、搭載可能なミサイルの排除、無力化が必要です。

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高 永喆

コウ ヨンチョル

拓殖大学客員研究員、韓国統一振興院専任教授、元韓国国防総省北朝鮮分析官。

1953年、韓国全羅南道に生まれ。1975年韓国朝鮮大学卒業(奨学生)、同年海軍将校任官、海軍大学卒業(正規18期)。

駆逐艦作戦官を経て第2艦隊特海高速艇隊長、済州道防衛司令部情報参謀、海軍士官学本部隊長、国立海洋大学・海軍教育団(ROTC)教官・副団長を歴任。

1989年からは、国防総省北朝鮮分析官(専門委員)、同日本担当官(防衛交流)を務める。

1993年、金泳三政権の軍部粛清により、全斗煥、盧泰愚の元大統領及び軍政治団体ハナ会らとともに逮捕。その後、金大中大統領の特別赦免・復権を受ける。

1999年12月に来日。以降、テレビ、新聞、週刊誌に北朝鮮問題解説、特講、講演を通して韓日友好に寄与中。

共著に佐藤優氏との『国家情報戦略』(講談社)、ほか『亡国のインテリジェンス』(文芸社)などがある。


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