約100年前のカルピスのパッケージは、かなり衝撃的だった。
甘くて酸っぱい「初恋の味」水玉模様の国民的飲料の歴史をたどる
初恋の味。何やらこそばゆい感じがしないでもないが、子供の頃から親しんだ「カルピス」の味は、今飲むと懐かしさと同時に新鮮味も覚えるはず。そんな「カルピス」が初めて発売されたのは1919年、間もなく誕生100周年を迎えるロングセラーだ。
今号で創刊から200号を迎える雑誌『一個人5月号』では、そんなロングセラーを特集し話題を呼んでいる。今回はその中から誰もが一度は飲んだことのある「カルピス」の秘密を紹介する。
発売当初の化粧箱には「美味整腸」「滋養飲料」の文字が。牛乳が60銭、ラムネが8銭だった時代に、400mℓ入り1円60銭という高級飲料だった。
生みの親は三島海雲という人物。日本から中国大陸に渡り事業を興した海雲は、仕事で内モンゴルに入った時に体調を崩す。ところが現地で飲まれていた発酵乳、酸乳を口にすることで体調を持ち直したという。そのおいしさと健康への効果を実感した海雲は、内モンゴルで学んだ酸乳をヒントに日本でも人々の健康に役立つものを作るべく研究を始めた。そして、誰からも愛される味の飲料を作り出したのだ。
「カルピス」は良質な国産生乳から脂肪分を取り除いた脱脂乳に、乳酸菌と海雲によって見出された独自の『カルピス菌』を加えて発酵させて作られる。
「カルピス菌は発売以来同じものを新鮮な脱脂乳に混ぜ、継ぎ足しながら品質を保ち、製造を続けています。カルピス菌は乳酸菌や酵母の集まりで、「カルピス」独自のおいしさを生み出しているのです」。
こう話すのは、広報部の嶋愛子さん。その後果汁入りやストレート飲料の「カルピスウォーター」「カルピスソーダ」なども生まれている。最近では、発酵過程でできる成分、「ラクトトリペプチド」に血圧を下げる働きがあることがわかり、健康食品に応用されている。また、生乳から取り除かれた脂肪分からはおいしいと評判の「カルピスバター」が生まれたりと、原料を無駄にしない製品作りが行われている。
国民的飲料「カルピス」、大人になった今飲んでみると、あなたはどんな思い出が蘇ってくるだろうか。
〈『一個人』2017年5月号より〉