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カープ打線が脅威なワケ。石井琢朗「ゲームで重要な、あとづけ論」

広島カープ・石井打撃コーチが取り組んだ「打線」改革

■.2攻撃は「守備目線」で考える

 僕の場合、攻撃の発想が「守備目線」です。
 チームにこんなタイプのバッターがいるからこういうふうに打線していこう、というような打者ありきの「打者目線」で考えるのではなく、守る側から見てどんな打線を組まれたらいやだろう、どんなシーンがプレッシャーを感じるだろう、と考える。例えば、打線を組むときに1番から4番まではすごく重要。でも、つながるということを考えると、4番まではどんな相手でもある程度警戒をするんですけど、そこを打ち取ったら「ちょっと一息つけるな」と(相手に)思わせちゃダメなんです。5、6、7番と息を抜くことができない打線は、それこそ守る側からしたら嫌じゃないですか。まあ、セ・リーグの場合ピッチャーが打席に入らなければいけないのが難しいところなんですが。

 そういう意味では、カープには「トリプルスリー」とまではいかなくても「3割20本20盗塁」ができるタイプがいました。だからこういう打線ができるって思った。

 ということで、そこから選手に意識してもらったのが「つなぐ」こと。
 どういうことかというと「ゲームでは100点満点を目指さないでください」ってことです。ゲームでは、というところが重要で、練習では100点のための練習をしてほしい。バッターにとって目指すところは三割です。当然です。「三割打って一流」と言われるわけですから。だから練習をするにあたっては三割を打てるようになるための練習をしっかりしてください、と言います。試合においても練習でやったことを試して、できなかったらまた練習して、というその繰り返し。それこそ試合っていうのは「試し合い」と書くわけですからね。練習でやってきたことを試す場所なわけです。

 ただ、試合というのはイコール(=)ゲームでもあるわけですよ。ゲームというのは1点でも多く取れば勝ち。勝ちか負けかなんです。じゃあどうすれば1点でも多く得点できるのか。その1点を取ることができるのか。

 それは三割で勝負をしない、ということです。「打てない」という残りの七割、いや極端に言えば十割を使ってバッティングをしてほしい。つまり100点の結果、ヒット、ホームランだけを目指さない。

■.3 ゲームで求めるのは「三割を目指さない」バッティング

 個人の成績だけでいえばヒットやホームランが満点。だからチャンスになったら「俺が返すんだ」という100点満点を目指す気持ちは大事。一方で、今まで感じていたのは「漠然と100点満点を目指して打席に立って、結果0点で終わってしまう」とか「チャンスだから絶対ヒット打たなきゃ、ホームラン打たなきゃという気持ちが強すぎて逆に失敗していたんじゃないか」ということ。
 まずは、そうじゃないんだっていうことが「100点を目指さない」ことなわけです。だって凡打でも得点できる場面というのはたくさんあるわけですから。

 そう、得点する方法っていうのはなにも「ヒット」や「ホームラン」ばかりじゃなくて、選択肢はいっぱいあるんですよ。状況によっては内野ゴロでも1点入るケースがある。外野フライはもちろん、満塁だったらフォアボールでも1点が入る。そういう状況判断のもと、まず最高の結果を求めて打席に立つんじゃなくて、マイナスなところから入る。一番しちゃいけないことは何なのか、何も起こらないことは何なのか。そう考えて打席に立ってほしい、と。だから、最低限どういうバッティングをしたら1点が入るのかを考えながら打席に入りなさいと言ってきました。

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石井 琢朗

いしい たくろう

広島東洋カープ1軍打撃コーチ。1970年8月25日生まれ、栃木県佐野市出身。栃木県足利工業高等学校在籍2年時に夏の甲子園にエースとして出場。1988年、ドラフト外で横浜大洋ホエールズに投手として入団。高卒1年目でいきなり初先発初勝利を挙げるものの、野手への思いが捨てきれず1992年から内野手に。以降、攻守の要として活躍。1998年には不動の一番打者として最多安打、盗塁王を獲得。チーム38年ぶりのリーグ優勝、日本一に貢献する。2009年に広島東洋カープに入団。2012年からはコーチとしてカープを支え、25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。著書に「心の伸びしろ」「過去にあらがう」(前田智徳・鈴川卓也と共著)などがありいずれも大きな反響を呼んだ。


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