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ブロックチェーンによって起きる「国家の再定義」とは?

ブロックチェーン入門③

ここ1年でブロックチェーン技術を取り巻く社会は、大きく変化した。連日、ニュースの見出しにブロックチェーンおよびビットコインという言葉が踊っている。こんなことは、1年前は想像ができなかったことだ。一方で、ブロックチェーンという言葉が独り歩きしていることも否めない。その本質や構造、特徴が理解されることもなく、「ブロックチェーンで銀行が消滅する!」「すべての仲介業者が必要なくなる!」「今こそ最大のビジネスチャンス!」 といった見出しばかりが先行しているのが現状だ。そこで、新刊『ブロックチェーン入門』の著者、森川夢佑斗にブロックチェーンを知る上でのポイントを訊いてみたが、今回は、ブロックチェーンが可能にする壮大なプロジェクトについても触れてみた。

■ブロックチェーンを使えば政府がいらなくなる?

 これまで政府行政機関が行ってきたことを、すべてブロックチェーン上で自動化してしまおうという壮大なプロジェクトも存在します。

 それが、Btination(ビットネーション)です。ビットネーションは、ブロックチェーン上に分散的かつ自律的な国家を構築することを目指し、従来政府が担ってきた認証サービスを代替する新しいガバナンスの形を実現することを目的としています。

 インターネットの普及や、輸送にかかる時間短縮やコストの低下などに伴うグローバリゼーションが進行する一方で、国家という地理的制約は未だ残存しています。

 ビットネーションは、このようにウェストファリア体制に基づく近代国家によって生じている地理的断絶を排除し、地理条件や出生にとらわれない形で、より低コストな統治サービスを提供することを目的としています。

 ビットネーションは。イーサリアムブロックチェーンを利用し、中央集権機関、つまり政府なしに様々な認証を行うプラットフォームを提供します。

 具体的には土地登記、婚姻、出生、死亡、パスポートなどのID、戸籍登録、財産権の記録など、いわゆる公的認証サービスとして従来政府や国家が担ってきたものを、改ざんが困難なブロックチェーンを活用することで自動化します。

 このようなビットネーションの提供するアプリケーションを活用することによって、中央集権機関が従来負担していたコストを大幅に削減できるだけでなく、そもそも国家という地理的な制約に縛られない形のガバナンスを実現します。

 将来的にはネットワーク上に構築された近代国家に代わる共同体として、投票機能や、スマートコントラクトを利用した民事契約の体系など、共同体のガバナンスに必要な諸機能を整備していくとしています。

 最終的には出生地に基づく国籍にとらわれず、世界中の人々が多様な選択肢の中から自ら共同体を選択し形成できる可能性もあると言えるでしょう。

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森川 夢佑斗

もりかわ むうと

京都大学在学中にAltaApps株式会社を創業し、仮想通貨のウォレットアプリ開発やブロックチェーンに係るコンサルティングを行う。現在は、株式会社Gincoの代表取締役として、仮想通貨時代の新たな銀行の構築を目指す。著書に『ブロックチェーン入門』(ベスト新書)、『一冊でまるわかり暗号通貨2016~2017』(幻冬舎)など。


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