出口治明氏が説く、一生モノのお金リテラシー。「倹約」ではなく「賢約」を
出口治明さん5月毎日更新 Q.6 財産三分法の一つ「財布」に入れたお金を使うときの考え方は?
「調べる、比べる」という意識は、賢い消費者の証。
財産三分法の考え方は、給与の手取り分を「財布」「投資」「預金」の3つに分けるというものです。
これらをシンプルに言い替えると、それぞれ「使う」「殖やす」「貯める」ということになりますが、僕はこの中では「使う」ことが最も大切だと考えています。
なぜなら、お金自体には価値はなく、何かと交換することによって、初めて価値が生まれるからです。
好きな物を買ったり、美味しい物を飲んだり食べたり、趣味や遊びに熱中したり……。
誰もが自分の生活を充実させることができているのは、言うまでもなく、お金を使っているからこそでしょう。
つまり、お金は人生を楽しむための手段なのです。それだけに、お金を使うときのルールは「楽しいかどうか」に尽きますね。
ただ、毎月入ってくる給与は、急には増えません。
そうすると、毎月使うことができるお金にも限度があるわけです。
だから、その範囲内で、自分にとって楽しいことにお金を使おうとすると、当然、それ以外の物に関しては倹約する必要が出てきます。
もしかしたら、倹約と聞くと、すぐにケチると捉える人がいるかもしれません。倹約はケチと混同されがちですが、決してそんなことはありません。
むしろ僕は、倹約の「倹」を「賢い」という字に書き替えて、「賢約」にしたほうがいいと思っているのです。
たとえば、新しいデジカメを買おうと考えたとき、皆さんはどのように行動していますか?
僕の場合、まずはインターネットでデジカメにどんな機種があるのかを調べ、各社の値段を比べたうえで、ショップに行くようにしています。
同じような商品を買う際に、調べて比べて、安いほうを選ぶというのは、全世界共通の消費の大前提だからです。
それに対して、そうしたことをめんどうくさがって、同じ物でも、気にせず高いほうを買ってしまう人もいるでしょう。これを浪費と呼びます。
つまり、「調べる比べる」という意識は、賢い消費者の証なんですよね。
そうした意識を日々徹底して無駄な出費を抑えておけば、お金が使える範囲内で、好きなことに多くのお金を割くことができます。それによって、自分の人生がより楽しいものになるというわけです。
そのためにも「賢約」は、お金を使ううえでぜひ身につけておきたい習慣なんですよね。