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都会のどまんなかに戦国時代の遺構――末森城(愛知県)

鈴木輝一郎 戦国武将の史跡を巡る 第28回

岐阜在中の歴史作家・鈴木輝一郎がゆるりとめぐる、戦国武将の史跡。
つい見落としてしまいがちな渋い史跡の数々を自らの足で訪ね、
一つ一つねぶるように味わい倒すルポルタージュ・ブログシリーズ!

絵にならぬ末森城のこっそり意表を突いてくる鳥居

 愛知・岐阜・三重の戦国の城跡や古戦場跡は、地元の人もあまり知らない形でこっそりひっそりあるか、おもいっきり広域すぎてどうにも手のうちようがないかの両極端にわかれます。
 ここ、末森城は、「都会のまんなかにどどーんとあるけど城郭の姿が戦国のまま残っている」珍しい例外です。街中にある有名な城址は、仮想天守閣を作っちゃったりするものですが。
 地下鉄だと東山線覚王山駅下車ですが徒歩で7分かかるので、カーナビで『城山八幡』と入力して車で行ったほうがいいでしょう。ちゃんと駐車場があります。

城山八幡本殿

  いうまでもなく信長の父親・織田信秀の居城で、信長に二度の謀反を起こして殺された信長の同母弟・織田信行(信勝)の居城でもあります。
 もともと末森城のふもとに城山八幡宮があって、末森城の廃城跡も境内の扱いになっていたそうです。
 そのせいか、戦国時代の城の遺構がよく残っています。

 戦国の城の多くは小高い丘に建てられています。突発的に盛土をしたような丘で、たいていは古墳を流用したものだそうです。この末森城も古墳を流用したものでしょう。
 小高い丘の周囲に空堀がめぐらされていて、ちょっとした城主の気分を味わえます。

城山八幡地図

  ただ連載的に申し上げると、じつのところ、「絵になる写真が撮りにくい」。Google Earthでぐりぐりするのが、いちばん雰囲気をつかみやすいという、なんとも皮肉なふうになる。
 それでは取材の意味がないので、何かないかと探してみたら、ありましたよ、奉納の鳥居。

奉納鳥居

  城山八幡宮は昭和11年に山麓から現在地に本殿を移したそうですが、そのときに奉納された鳥居の奉納者に、「雑賀孫市」さんの名前が。

 戦国の鉄砲隊のほうの『雑賀孫市』は本名は「鈴木孫市(諸説あり)」なのですが、この方は本名が「雑賀孫市」なんですね。
 でも、「雑賀孫市」って戸籍名を持つ人生ってどんなんだろう…

 どうでもいい話ですが「鈴木輝一郎」は戸籍名です。
 珍しい名前で、ググっても同姓同名がいないようですが、なにか変った人生を送ったかというと、別に何も……

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鈴木 輝一郎

すずき きいちろう

作家

1960年岐阜県生まれ。小説家。歴史小説『浅井長政正伝』『戦国の凰 お市の方』など著書多数。2008年には著作が50冊に達した。

日本推理作家協会・日本文藝家協会・日本冒険作家クラブ会員。


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