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教育現場の課題を解決するには…教員と保護者の声を訊け

第33回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

学校

■問題は文科省ではなく現場で起きている

 『事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!』
 どこかで聞いたセリフと思われる方が多いのではないだろうか。これは、人気テレビドラマだった「踊る大捜査線」の劇場版で、主人公の青島刑事が、捜査本部から現場を無視して無茶振りの命令をしてくる幹部に対して発した怒りのセリフである。
 いまの学校現場では、まさに、この青島刑事のセリフが飛び交っているのではないだろうか。口に出しての言葉はなくても「事件は会議室で起きているんじゃない!」という心の叫びで満ちている気がする。

 ある県庁所在地在住の母親が、次のように連絡してきた。

「今年度の教育過程は来年3月までに終了する方針が決まったため、6月半ばになって通常授業に戻ったとたんに授業の進度がハイペースになり、うちの子は小学校1年生なんですが、疲れ切ってしまって夕食も食べずに寝てしまう日が多くなっています」

 新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の影響で長期間の休校を強いられ、遅れた授業分を年度末までに終えるために、学校現場は必死になっている。年度末までに必ず終えるのは進学を控えた小6と中3で、ほかの学年は次の年に持ち越して、数年かけて取り戻すと文科省は言っているが、実行する現場にとっては簡単なことではない。
 遅れた分を取り戻すために1日の授業時数を増やすことが全国の学校で行われているが、そのために1時限あたりの時間を短縮し、さらに20分休みを廃止し、10分休みを5分に短縮するなどして授業時数を増やす工夫がされている。それを、小6と中3だけでやるわけにはいかない。授業の終わりを告げるチャイムを、同じ小学校で小6だけ早く鳴らすなんてことができないからだ。
 つまり、全校で今年度中の教育課程を終える体制をとらざるをえない。そこでは、1年生も例外ではなくなっている。

 さらに、別の母親からは次のような声が聞こえてきた。

「授業についていけない子が増えているようです。自分のクラスにも居ると子どもが言っています。子どもの目から見ても明らかなんですから、深刻だと思います」

 保護者にしてみれば、これは大きな不安に違いない。授業についていけない子が放置されているというのだから、当然である。
 ただ、こうした状況に教員が平気でいるわけではない。桃山学院教育大学人間教育学部の松久眞実教授が、通常授業に戻った学校の教員数十人を対象に緊急アンケート調査を実施し、生の声を拾っている。そこである教員は、次のように回答している。

「休校中に宿題を出して、それができているものとして授業を進めざるをえないのだが、家庭環境などの問題で宿題ができていない子は授業を理解できていない。格差の広がりを実感している」

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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