「投資」を煽るメディアに踊らされるな! 出口治明氏が説く「金融リテラシー」の大切さ
出口治明さん5月毎日更新 Q.30 最後にこの記事の読者にひと言
金融リテラシーを身につけることが何よりも大切
このインタビューでお伝えしたかったのは、たとえば金融であれば、金融の原理原則、世界中で当たり前の原理原則をもっと知っておくべきです、ということに尽きます。
日本では、あまり金融教育がされていない現状についてはこれまでも触れてきましたが、だとすれば、自分で勉強する以外に金融リテラシーを身につける術はありません。
特に世の中の風潮や、それを扇動するような根拠のない情報にだまされないようにしてほしいと思います。
例えば金融でいうと、昔は、雑誌の特集やインターネットの記事なども「貯蓄」というタイトルが流行った時代がありました。それが、この1、2年くらいは、明らかにトレンドが「投資」に移ってきている。
そうするとそれを見たテレビ関係者や、出版社の編集者は、「これからは貯蓄じゃなくて、投資だよね」となびいていき、世の中全体が投資の時代になる。
僕自身は、貯蓄は貯蓄として本質的な意味があると、ずっと言い続けています。貯蓄は本来お金を増やすためのものではなく、「金庫」だという考え方です。貯蓄は、流動性が何よりも大事なのです。「いつでも引き出して使えるお金」をキープしておかなくてはいけないのです。
これは基本中の基本です。だから、貯蓄しても金利が低くて儲からないから、すべて投資に変えましょうというのは、原理原則を無視した話です。投資は、「なくなっても困らないお金」の範囲でおこなうべきだと思うのです。
株についても少し触れておきますが、今は、円安だからどんどん株価が上がる。だから、とにかく買おうという流れがありますよね。
普通に考えたら、メインは外国人の投資家が買っているのですから、彼らは日経ダウという指標は見ていないと、すぐにわかると思うのです。少なくとも彼らが見るのは、ドルベースの日経ダウですよね。そう考えれば、なんの材料がなくても、円が安くなったら自動的に株価が上がりますよね。それだけの話だということです。
だから僕は、どこかのメディアがドルベースの日経ダウを毎日載せれば、世の中のみなさんのリテラシーがもっと上がると、これもずっと言い続けているんですけれど。
このインタビュー記事も最後になりましたが、ぜひみなさんには、自分で身に付けた金融リテラシーで物を判断していってほしいと心から願っています。世の中に流れている情報は、まず疑ってみて、自分で調べる気構えを持ってほしいと思います。