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「永遠平和」は理性をもった人間の義務である。戦争はなぜなくならないのか

カントの「永遠平和」論を読み解く

 朝鮮半島で戦争の機運が高まっている。世界を見回してみると、いつもどこかで争いや対立が生じている。日本国憲法第九条では戦争の放棄と戦力の不保持が謳われているが、実際には自衛のための力を持たなければならないという主張も現実的だ。
 人間は何故、武器を持ち、戦争をするのか。完全な平和をもたらすことは不可能なのか。
 哲学者のカント(1724~1804)はこの問題について考察した。そして、人間はやがて「永遠平和」を実現するだろうと論じた。


国が他国と争っても正当な理由

 そもそも人々が争うのは、自分の生命や利益を守るためである。社会の秩序を守る国家が存在せず法律がないとするならば、自分の身を守るために他人と戦い危害を加えることは正当なことだろう。

 

 社会が成立する前の原始時代にタイムスリップしたと想像してみて欲しい。襲いかかって来る者から守ってくれる警察も、訴え出る裁判所も存在しなければ、自分の身は自分で守らなければならないと思えるのでないだろうか。そういった状態では、他人は自分の身を脅かす外敵にほかならない。
 しかし、野放しのままで争いを続けているよりも、人々が理性を働かせて、権力と法によって統治される道徳的な「市民社会」を築いたほうが、皆の自由がより多く実現できるようになるには明白である。だから、人々は無政府状態で争い合うよりも国家による秩序立った支配を望むのである。
 権力と法を執行する政府が成立すれば国内の秩序は維持される。だが一方で、国と国との関係である国際社会においては、いまだに一つの法によって支配される「市民社会」が築かれていない状態である。
 だから、国家が他国と戦争をしてでも自国の安全と利益を守ることは正当なこととなるのだ。 

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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