【30万に1人の難病・魚鱗癬】苦しみから希望(退院)へ! それは少しずつでも確かに伝わる母の我が子への愛情
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(26)
難病「道化師様魚鱗癬」を患う我が子と若き母の悲しみと苦しみ。「ピエロ」と呼ばれる息子の過酷な病気の事実を出産したばかりの母は、どのように向き合ったのか。『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』の著作を綴った「ピエロの母」が医師から病名を宣告された日、母は我が子の「運命」を感謝しながら「これからの親子の人生を豊かなものにしよう」と新たなる決意をした。
今回は、我が子に薬を与えることで、次第に確かな愛情が高まり、「退院」という希望の光が見えてきた瞬間までの想いを綴った。
■今は、しょうがない。
看護師さんがシリンジを使い、少しずつ陽(我が子)の口に薬を含ませていく。
あふれないように、少しずつ、少しずつ、口の中に入れていく。
ふと疑問に思い、
「どんな味がするんですか?」と尋ねると、
「ん〜、油を飲んどるようなもんかなぁ?」
「もうちょっと大きくなって、味が分かるようになってきたら、あげるの大変になるかもやなぁ〜」
と答える看護師さん。
・・・。
そしてさらに「これ退院したら、薬の調合もお母さんに、してもらわんならんでなぁ〜!」
「お母さんやることいっぱいやけど、陽ちゃんのために頑張ってもらわななぁ」
・・・!?
調合って? そんなの素人がしてもいいの?
頭の中が「???・・・」で埋め尽くされていると、あっという間に薬の時間が終わった。
この薬は1日1回、明日からは私が、陽に薬をあげることになった。
その後も陽と過ごしていると、パーテーションからひょこっと顔を出し、
「よ〜うちゃん!」と声を掛けて下さる保育士さん。
いつもいつも、優しい笑顔、優しい声、可愛い保育士さん。
いろんな歌を陽に聞かせてくれて、たくさん話をしてくれる。
「お母さん、聞こえてなくても、こうやってお歌うたったり、たくさん話しかけてあげてね。絶対に陽ちゃんに届いているから」
「一方通行だなんて思わないでね」
「ほら、話し声が聞こえると、なんだか陽ちゃんの表情、明るくなるでしょ!」
「陽ちゃん、今日もお母さんと一緒で、嬉しいねぇ」
「お母さんが帰った後、淋しいのか、泣いていることが多いんですよ! 陽ちゃん、ちゃんと分かってるんです」
正直に言うと、陽の表情が明るくなったかどうかは、見てもわからなかった。
でも、「絶対に届いている」という保育士さんの言葉は、とても嬉しかった。
私の声は、陽に届いていると思いたかったから。
ずっとそう思って、声をかけてきたから。
だから、断言的に届いていると言って頂けたことで、
胸の奥にあった不安が、少し和らいだ気がした。
しかし「私が帰った後に泣いていることが多い」ということも知り、少し和らいだところがまた締めつけられるような、切なさが襲った。
仕方ない、仕方ないんだ。
いまは、しょうがない。
そう心の中で言い聞かせ、
「明日からは、母ちゃん、お薬頑張るね。またすぐ来るからね。陽、おやすみ」
と声をかけて病院を後にした。
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【参考文献】
『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』(アメーバブログ)
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子(書籍)
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。