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15年連続増収を達成する会社が、「パート社員」を大切にする理由

希代の経営者が語る、右肩下がりの時代を生き抜く働き方改革 第1回

最新刊『儲かりたいならパート社員を武器にしなさい』(ベスト新書)を上梓した、株式会社武蔵野の代表取締役社長・小山昇氏。IT化、残業ゼロ、非正規雇用者の待遇改善などに数年前から取り組み、会社の成長につなげてきた同氏は、いま世の中に広がる「働き方改革」の動きをどう見ているのか、お話を伺いました。

販売戦略よりも、働く人の数が重要な時代

――今、なぜ働き方改革が必要なのでしょうか。

 

 会社の業績をよくするには、わが社の都合ではなくて、世の中の都合に合わせて変化をすることが必要です。

 消費税の増税(2014年4月)を機に、政府は国債を買い戻し、そのお金が市場に流れ出たことによって、株価が上がりました。また、公共事業を中心に雇用も増えています。

 ところが、仕事は増えているのに、人手が足りません。少子化によって人口が減少していること。それから、最低賃金の上昇にともない就職先の選択肢が増え、売り手市場になったことが人手不足の原因です。

 増税以前は、人が辞めても、新しい人をすぐに採用することができました。ですが、増税を境にして、「辞めても次の人がいる時代」から「辞めたら次の人がいない時代」へと変わっています。

 さらに昨今、新卒者の会社選びのトレンドも変わってきました。学生が行きたいのは「楽しくて、休みが多い」会社です。

 ということは、時代の変化や求職者の雇用の変化に合わせて会社をつくりかえていかなければ、人材を確保できないわけです。

 今までは、営業力がある会社や、販売戦略が巧みな会社が業績を伸ばしていました。でも、これからは違います。「人を大切にする会社」でなければ生き残れない。「人材をどれだけ多く確保できるか」が、会社の業績を伸ばすポイントです。

 例えば、宅配サービスの会社の場合、どれだけすばらしい配達システムを持っていたとしても、「配達する人」(人材)が不足していたら、システムを運用することはできません。

 そこでわが社では、「新卒者を積極的に採用する」「働いている社員が離職しないようにする」「パートさんを戦力化する」ためのしくみをつくって、人材の確保に努めています。

――働く人の数がなぜ重要なのですか。

 経営とは、お客様の数を増やすことであり、お客様の数を増やすには、お客様と接する「人」を増やす必要があります。「お客様との接点はアナログで手間をかけ、バックヤードはIT化で効率よく」がわが社の方針です。お客様とは顔を合わせて話す(フェイス・トゥ・フェイス)ことが重要です。

 仮に、すべてが機械仕掛けになっていて、ボタンを押したら自動でカレーライスやコーヒーが出てくるようなレストランがあったとします。数日なら耐えられるかもしれませんが、どんなに料理がおいしくても、私はこの店の常連にはならないでしょう。

 経営サポートパートナー会員企業(武蔵野がコンサルティングしている企業)のひとつ、「株式会社凪スピリッツ」(生田智志社長)は、国内で10店舗のラーメン店を運営しているほか、台湾、フィリピン、香港などの海外にも進出しています。「ラーメン凪 大宮東口店」には「空飛ぶラーメン」という画期的なシステムがあります。レーンに乗ったラーメンが、厨房からお客様の前まで最速で運ばれるという全自動のシステムです。

 このシステムがあれば、ホールに人は必要ありませんが、あえて一人立たせています。なぜなら、人がいないと、店内が無機的な印象になるからです。一人でも人がいると、空気が動くため、冷たさを感じさせません。

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小山 昇

こやま のぼる

株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年、山梨県生まれ。東京経済大学卒業後、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任し、現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育て、日本で初めて「日本経営品質賞」を2度受賞。著書に『強い会社の教科書』『残業ゼロがすべてを解決する』(ともにダイヤモンド社)など多数ある。


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  • 2017.06.09