「女性は決められたことを遂行する能力が高い」パート出身の女性取締役がいる会社、社長の弁
希代の経営者が語る、右肩下がりの時代を生き抜く働き方改革 第2回
女性が優秀なのは、決められたことがきちんとできるから
――「女性の活用」にはどんなメリットがあると思いますか。
わが社の従業員は800人いて、男性が多い体育会系軍団のように思われることもありますが、実は3分の2が女性です。
女性は男性よりも几帳面で、決められたことを決められた通りにきちっとやる能力が高い。一方、男性はいい加減なところがあります(笑)。
――決められたことを決められた通りにやることが、武蔵野では重要ですか。
非常に重要です。なぜかというと、武蔵野は「鉄砲ではなく弾を売る」ビジネスだからです。
ビジネスモデルには、「鉄砲」を売るビジネスモデルと、「弾」を売るビジネスモデルがあります。
「鉄砲」は一度手に入れたら、壊れない限り、もう一丁買うことはありません。売ったらそれでおしまいです。
ですが「弾」は消耗品なので、鉄砲を利用し続ける限り、補充が必要です。
弾を扱うビジネスは、同じお客様に、同じ商品を、定期的に、繰り返し販売するビジネスです。武蔵野のダスキン事業では、マットやモップなどのレンタルサービス、清掃・家事代行サービスをメインに行っていますが、いずれも同じ店舗や家庭に、繰り返し、繰り返し訪問をする仕事です。ですから、決められた仕事をきちんと回せる能力がとても重要になります。
男性は、女性に比べると、「同じお客様に、同じ商品を繰り返し売る」のが苦手なので、ときとして、決められた仕事から脇にはずれようとすることがある。そんなときでも、優秀な女性パートさんがいれば、「ダメじゃない、ちゃんとやらないと」と男性社員を指導してくれます。女性パートが男性社員を指導するのが、わが社の特徴です。
――武蔵野では、パートさんが社員を動かすこともあるのですね。
しょっちゅうです(笑)。なぜかというと、パートさんのほうが、仕事ができるからです。社員は人事異動が多いので、業務に習熟する前に異動になります。その部署の仕事を80%くらい覚えた頃には他の支店や部署に異動になるため、ずっと同じ仕事をしているパートには勝てません。
社長と価値観が合う人は、まかせて安心
――武蔵野には「パート出身」の常務取締役がいると聞きましたが、小山社長の目から見てどんなところが優秀だと思いますか。
滝石洋子という、勤続39年の非常に優秀な常務取締役がいます。彼女は、ダスキン商品を各家庭に交換に行くシーダー(外交員)として働きはじめ、パート課長を経て、部長昇格を機に社員になりました。
彼女は、物事に対する捉え方や感覚が社長の私とぴったり合うんです。だから仕事を任せられる。
わが社では、全社員に対して「エナジャイザー(energizer)」というツールを使って適性テストを行っていますが、「対象評価価値観」が私といちばん似ているのが、滝石です。「戦力になる人材」とは、社長と価値観が共有できている人であると私は考えています。だから、私と同じ考え方ができる滝石は、優秀なんです。
――入社当時、彼女が小山社長に反感をもっていたという話も同書で明かされていますが、どのように価値観が揃っていきましたか。
毎月の評価面談で顔を合わせたり、コミュニケーションの回数を重ねながら、だんだんだんだん、少しずつ、ですね。
飲み屋さんに例えてみると、世の中に「スナック」はたくさんあるのに、決まったスナックの常連になるのはなぜですか?
それは、回数を重ねることで、スナックのママとお客様がお互いに学習しているからです。
ママは「このお客様のお酒の好みはこう」、一方でお客様も、「ここのママはこう言うとご機嫌になる」ことがわかってくる。だから、お互いがWIN-WINの関係になるわけです(笑)。
会社でも、同じです。上司と部下の関係は、質より量。回数を重ねることでコミュニケーションはよくなります。
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