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井口資仁引退表明。憧れた3人の選手と未来を託す内野手。その功績を追う

プロフェッショナルにふさわしい井口資仁の素顔

フィジカルを重視し始めた理由

 今年3月のWBCで、外国人投手が投げる打者の手元で動く変化球に対応するため、侍JAPANの打者たちが、「ボールを手元まで引き付けてから打つようにしている」ことがニュースになったが、井口は、10年以上前から、その打撃理論に取り組んでいたのだ。
 ミートするポイントが体から近いので、確実にバットでボールをとらえやすい点に、「引き付け打法」の長所がある。しかし、その反面、窮屈な態勢でバットを振るために打球が詰まりやすいという欠点も孕む。

 井口は引き付け打法のコツを、「詰まることを怖れない勇気が必要」だというが、当然、詰まりながらも内野手の頭を越す打球を放つパワーも必要となる。日本球界では、いまだに否定的な意見が残るほど、ウエイトトレーニングが敬遠されていた時期もあるが、井口は若手の頃からその重要性を認識し、実践してきた選手の一人だ。

 そして、メジャーリーグへ移籍してから、フィジカルの重要性をより実感するようになったという。

 

「バッティングに関してもフィールディングン関しても、日本野球の技術は本当にレベルが高い。実際にメジャーリーグでプレーしてみて、そんな日本球界で身につけた自分の技術が十分に通用すると実感できた。ただ、同時にその技術を発揮するためには最低限のフィジカルが必要だったことも事実。メジャーには、とてつもない身体能力を誇る選手がいる。彼らにフィジカルで優ろうとは思わなかったけれど、せめて同じ土俵に立たないと、勝負にならないですからね」

 引退会見で井口は、開幕前から「今季限りで現役を退くと決めていた」と明かしたが、春のキャンプでインタビューした時、その心の内をわずかながら垣間見ることができたような気がした。

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田中 周治

たなか しゅうじ

1970年、静岡県生まれ。東京学芸大学卒業後、フリーライターとして活動。週刊誌、情報誌などにインタビュー記事を中心に寄稿。また『サウスポー論』(和田毅・杉内俊哉・著/KKベストセラーズ)、『一瞬に生きる』(小久保裕紀・著/小学館)、『心の伸びしろ』(石井琢朗・著/KKベストセラーズ)など書籍の構成・編集を担当。現在、田中晶のペンネームで原作を手掛けるプロ野球漫画『クローザー』(作画・島崎康行)が『漫画ゴラクスペシャル』で連載中。


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