宗教とは何か? 20年の修行を積んだ禅僧が語る宗教と現世利益の関係
坐禅で「悟り」は開けない その一
普遍宗教と現世利益
私が考える「宗教」とは、このような「現世利益」的テクノロジーではありません。私がテーマにするのは、ブッダやキリストやマホメッドが創始した教え、「普遍宗教」と言われるような思想と実践の体系です。
彼ら3人、すなわちブッダやイエスやマホメッドは、その活動を開始したとき、貧困でも病気でも社会から孤立していたわけでも、老いに苦しんでいたわけでもありません。
ブッダは釈迦族の国の「王子」として生まれ、「大変優しく育てられた」と述懐していたくらいです。
イエスも「大工の息子」とされていますが、当時の「大工」は技術者として重宝されていたでしょうから、貧困に喘いでいたとも思えません。実際、聖書にそんな記述はありません。
マホメッドにいたってはメッカの大商人の家の出身です。
すなわち、彼らがそれまでの生活を一変させたのは、現世利益とは無関係なのです。
〈『「悟り」は開けない』ベスト新書より構成〉