西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】
ぶらり大人の廃線旅 第19回
栃木県北東部を走る東野鉄道の廃線を訪る
栃木県の北部、東北本線西那須野駅から東へ分岐し、大田原(おおたわら)を経て黒羽(くろばね)方面を結んでいたのが東野(とうや)鉄道である。野州(やしゅう)の東部を走るからで、野州とは下野国(しもつけのくに)のことだ。
なぜ下野で「しもつけ」と読むのかといえば、説明は少し長くなる。かつて上野国(こうづけのくに・ほぼ群馬県)と、この下野国(ほぼ栃木県)はまとめて毛野国(けぬのくに)と呼ばれていた。
それを5世紀までに上下に分けたのであるが、当時は国名や郡名、郷名は必ず2字で表記する決まりがあり、上毛野国・下毛野国とするわけにいかず、「毛を剃って」上野国・下野国としたのである。読み方は「かみつ・けぬのくに」および「しもつ・けぬのくに」のはずだが、後に「こうづけのくに」と「しもつけのくに」に転じた。
ついでながら毛野国を流れている代表的な大河であることから毛野川(けぬがわ)と呼ばれていた川が、今は鬼怒川(きぬがわ)と呼ばれている(中世~近世には衣川・絹川の表記も)。
さて、野州の話であった。上野国は上州(じょうしゅう)でいいのだが、下野国を「下州」などとすると、どうも格好が悪いからか、上州で使わなかった野の字を使って野州にしたのではないだろうか。