西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】
ぶらり大人の廃線旅 第19回
乃木神社前駅のモニュメント
西那須野駅を出てからしばらく右カーブが続いていたが、ほどなく直線区間となる。やがて前述した神社入口にあたる乃木神社前駅の跡地。その参道を横切った先には駅の跡地を示すモニュメントがあった。改めて作ったプラットホームと駅名標、レールも敷かれている。ただし鉄道が現役時代の地形図で確かめると、駅は参道の手前(西那須野寄り)にあったようだ。
その再建プラットホームに大谷石(おおやいし)が積まれているのは、この地域ならでは。大谷石は宇都宮市の大谷町を主産地とする建材で、火砕流などが積もって固まった軽石凝灰岩である。栃木県や埼玉県を歩いていると、特に民家の土蔵や塀などに目立つし、このあたりの鉄道ではプラットホームに積まれていることも多い。東武鉄道春日部(かすかべ)駅もそうだ。乃木神社への参道はまさに一直線で、人車軌道の走っていた大田原街道からまっすぐ900メートルほど続いている。さすがに100年経った神社の参道は落ち着いた並木道になっていた。
散った八重桜の花びらを踏み、傍らの菜の花を見ながら歩くと、間もなく小さな森に入る。用水を跨ぐ箇所があったので脇へ回ってみると、鉄道時代からと思われる石積みのカルバート(伏樋)が見えたが、さすがに廃止から50年も経っていると、これが鉄道時代のものとは断言できない。