【第3波を乗り越える】「正しいか、間違いか」よりも「みんなが同調しているか」で物事を決めてしまう日本の特徴【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㊷】
命を守る講義㊷「新型コロナウイルスの真実」
◼︎さらに政府までパニックに乗ってしまう
パニックが起こると人々が群集化して、トイレットペーパーを買い占めたり、差別、迫害をし始める。そこは世界共通なんですけど、日本の一番いけないのは、政府がそこに乗っちゃうところです。
アメリカのCDCは、買い占めが起こったときにも必ず「マスクは意味ありませんよ」と言い続けるんです。「それは科学的には正しくない。ちゃんと手指消毒をしましょう」とか「パニックになってもしょうがないですよ」とか「中国人を差別しちゃだめですよ」ということを、ちゃんと言うんです。
ところが日本政府は「みんながパニックになってるから、じゃあマスクを増産しましょう」と、科学的な正しさを無視してパニックに乗っちゃうんですよね。みんなの欲望に合わせてしまう。
みんながパニックになって騒いでいるときには、政府の上にいる人たちが「まあまあちょっと待って。それは違うよ」とやるのが国の本来のあるべき姿なのに、上までそれに乗っかっちゃう。
子宮頸がんワクチンの問題なんかは典型的ですよ。子宮頸がんワクチンを打てば子宮頸がんは防げる、患者も減るし、死亡者も減る、安全性も十分に確保できている。これについて、科学的データはもう十分あるんです。
ところが巷では「怖い」「危ない」「副作用の被害者が怒ってる」という状況があった。そのときに厚労省は、説得するでも議論するでもなく、「じゃあ打つのやめましょう」って言っちゃったんですね。
「定期接種だけど、接触的な勧奨は差し控えてるだけだ」とか訳の分からない言い方で言い抜けはしていますが、要は「打つな」って言っちゃったんです。あれこそまさに「東大話法」ですね。
科学的には安全性は確保されているのに、みんなが納得してないから、打たない。「みんなの納得」というのは、「同調圧力」とか「空気」とかの同義語ですね。要は、「正しいか、間違ってるか」よりも、「みんなが同調しているか」で物事を決める。日本では政府が率先してそれをやるんです。
小・中・高等学校を休校にしたのも、科学的な根拠もないから専門家会議はべつに推奨してなかったのに、「それではみんなが納得してくれない」から、政治的判断でやったわけですよね。
パニックは世界中で起きる、間違いも世界中で起きる。けれどもそこで、上がパニックに乗っかっちゃうのが、日本の特徴なんですよ。本来は「そこはパニックじゃないでしょ」「トイレットペーパーを買うのはおかしいでしょ」と言い続けるのが国の役割なのに。
(「新型コロナウイルスの真実㊸」へつづく)
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