夏の甲子園、連覇なるか。作新学院の「濃さ」
野球ノートで鍛え上げられた言葉力
作新学院、連覇へ求める「濃さ」
昨夏、エース今井達也を擁し甲子園優勝を果たした作新学院。あれから1年。ふたたび、その舞台に戻ってくる。連覇をかけて。
6月。「野球ノートに書いた甲子園」という書籍の取材で作新学院を訪ねた。本書は球児が綴る「野球ノート」に焦点を当てたもので今夏で5冊目を迎える。累計17万部と好評だ。
いきなり話が逸れるが、とある名門高校の監督にちくり言われたことがある。
「野球ノートって球児なら誰でもかいてるんじゃないの? すごいことなの? 時代は変ったなあ……」
事実、野球ノートへ取り組む高校は多い。違うのはその「濃度」だ。義務として、言わば「書かされている」チームと、自主的に、目的を持って「書いている」チームでは、明らかに違いがある。訪ねた作新学院、33歳で夏を制覇した監督・小針崇宏氏はまさにその点を突いた。
「野球ノートはやらされるようではダメ。積み重ねて読み返した時に力になるものだと思います。正直、うちの選手たちのノートはまだまだですよ」
続けてこう言う。
「読めばみんないいことを書いていますよ。こういう時代ですから、目の前できちんと挨拶をした、それが大事だ、とかね。でもそれは、その場を書いただけで、後に続かなければ。グラウンドの上でつながっていなければダメです」
いいことを書いていても、それが実行されていなければ意味はない。その言葉に、野球ノートへの「濃度」を求めていることが感じられた。
小針監督自身、濃い言葉を書き綴っている。ノートではA4の紙やメモ用紙、いろいろなものに思いついたこと、感じたこと、学ぶべきこと、チームの改善点を書き記し、ファイリングする。そのメモを、バスのなかで選手たちに渡し、読ませることもある。
キャッチャーの加藤は言った。
「監督のメモ、言葉はものすごく突き刺さります」
選手たちの「野球ノート」からもそれがうかがえる。多くの選手が「監督からもらった」という言葉をノートに記し、そこに自身の反省と感想を綴る。いいことが書いてある。
では、グラウンドではどうか。
ノックが終わったあと、レギュラーが率先して球拾いをし、後輩に声をアドバイスを送る。
県予選では、守備のミスがいくつかあった。そのシーンでも選手同士が声を掛け合い、解決しようとする姿勢が見られた。
連覇の重圧はあるだろう。それでも作新学院の濃い野球がその突破口になるかもしれない、そう感じた。