日本にこんな祭りがあったとは……江戸時代から伝わる「鉄砲祭り」がアツい
ニッポンの奇祭・珍祭⑤
まるで西部劇⁉ 馬が走り、銃声が鳴り響く。江戸時代より続く豊作猟祈願の祭りを紹介。
号砲轟く人垣の中、神馬が猛ダッシュ! 「鉄砲まつり」
時季:例年12月第2土日曜
場所:埼玉県秩父郡小鹿野町、飯田八幡神社
バスから降りると、いきなり「ドスン、ドスン」という重たい音が響いてきた。
男たちが空に鉄砲を向け、空砲を撃っているのである。辺りにはまがまがしい硝煙の臭いが立ちこめている。まるで西部劇にでも出てきそうな、ハードボイルドな町だ。
やがて、八幡神社の参道に観客が集まってくる。両側に人を制止するためのロープが張られ、もう立錐の余地もない。
参道に神馬がやってきた! すると、ガンマンたちは参道を挟んで向かい合い、銃口を宙へと向ける。
「ドスン、ドスン」
銃口が火を噴くと同時に、馬が走り始めた! まるで何かに追われるように、脅えたように。
馬は瞬く間に神社の階段を駆け上り、その姿を消した。辺りには硝煙の臭いと人々のため息が残った。
祭りの行われる小鹿野は、平家の落人伝説も残る山奥にある。鉄砲祭りは江戸時代に始まるとされているが、詳しい起源は明らかになっていない。鉄砲を撃つのは、猟師による豊猟祈願の意味があるという。
〈『一個人』2017年8月号より構成〉