「プラトンの授業なんて暇つぶしだよ」あの大御所に噛み付いたディオゲネス
天才の日常~ディオゲネス<第2回>
アレクサンドロス大王とディオゲネス
ギリシアを支配したアレクサンドロス大王がディオゲネスに面会したことがあった。少年の頃アリストテレスから哲学を教わった大王は、ギリシアの哲学者の中でも異彩を放つディオゲネスに興味を持ったのかもしれない。
ディオゲネスは森の中で日向ぼっこをしていた。すると、アレクサンドロスがやって来て「何なりと望みのものを申してみよ」と話しかける。おそらく、お供を引き連れてそれなりに威厳のある格好をしていたであろう若き大王に対して、彼は「どうか、わたしを日陰におかないでいただきたい」と答えたそうだ。
アレクサンドロスは「余は大王のアレクサンドロスだ」と名乗った。それに対して彼は「そして、俺は犬のディオゲネスだ」と答えた。どんなところが犬なのかと大王が尋ねると「ものを与えてくれる人には尾を振り、与えてくれない人には吠え立てて、悪者には噛み付くからだ」と答えた。
「お前は余が恐ろしくないのか」と大王に問われたディオゲネスは「あなたは善い者なのですか、それとも悪い者なのですか?」と聞き返した。そして「無論、善い者だ」と答えた大王に対して「それでは、誰が善い者を恐れるでしょうか」と言った。
後にアレクサンドロスは「もし自分がアレクサンドロスでなければ、ディオゲネスであることを望んだのに……」という言葉を残したと言われている。若くして王の座を継ぎ、大きな責任を背負う身からすれば、貧しくとも自由奔放に生きるディオゲネスが羨ましく見えたのだろうか。
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