戦後突然ヒーローに祭り上げられた信長
大間違いの織田信長 ⑪ 戦前に信長を評価したのは、たったの三人!?
戦後に突然ヒーローになった信長
戦前まで話を進めて来ましたが、まだ信長は〝関脇〟のままです。つまり信長は戦後になって急に「英雄」になります。それが何の因果か、部下の秀吉と入れ替わる形でした。
戦前最大のヒーローは豊臣秀吉でしたが、戦後日本においてのタブーを犯しています。それが朝鮮出兵です。大日本帝国は朝鮮半島に攻め込もうとしていた時期なので、本当に攻め込んだ秀吉は偉い! だったのですが、戦後は外国人を殺しまくったということで、ヒーロー扱いできなくなります。
今でこそ侵略は悪いと思われていますが、当時は褒め言葉でした。どんなに早くても一九一九年のベルサイユ会議までそんなことを言っている人はいませんし、一九二八年に不戦条約で初めて公式に侵略戦争は良くないと言われましたが、実際はどうだったか……。
ちなみに、私が色々な本で悪評をしまくっているウッドロー・ウィルソンというアメリカ合衆国大統領がいますが、一九一九年の時点では彼が勝手に言ってるだけで、世界的な価値観にはなっていません。それが一九四五年に国際連合ができて、国連憲章で侵略戦争が禁止された瞬間に、いきなり悪い言葉になります。しかも日本は敗戦国です。朝鮮出兵をして外国人を殺しまくった秀吉は、 とても英雄扱いできない。そんな時代背景がありました。
では代わりのヒーローは誰にしようとなったときに、秀吉の上司だったではないか、良いところまで行ったではないか、ということで織田信長がクローズアップされます。
信長は国内の人を殺しまくったけれども、外国人を一人も殺していないし、むしろ外国人には優しくて、雇った黒人奴隷に「お前は肌が黒いから洗ってやる」と言って、背中をゴシゴシしたという実話があります。ちなみに、その黒人はヤスケという名前で、本能寺の変まで従っていて、お前は日本人じゃないから逃げていいよと言われて女の子と一緒に逃がしてもらえました。
〈『大間違いの織田信長』(著・倉山満)より構成〉
明日は『戦後浸透した、風雲児信長のイメージ』
大間違いの織田信長⑫ 萬屋錦之助と大河ドラマ『国盗り物語』です。
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