エマ・ワトソンの言葉から21世紀のフェミニズムを考える
ガラスの天井のひらきかた①
正論を振りかざすだけの女性にはなるな
2001年に映画『ハリー・ポッターと賢者の石』のハーマイオニー役で、11歳の時にデビューしたエマ・ワトソンも、今や27歳。ちょうど本書を執筆中は、映画『美女と野獣』が日本でも公開中で、すっかりレディに成長し、凛とした美女役を演じていました。
私が注目したのは、2014年9月にエマがUN(国連)ウィメン 親善大使として行った、国連でのスピーチです。そこで彼女は、「世間の人は、フェミニストに対して『権利を求めて騒ぎすぎる、男嫌いで魅力的ではない女性』という偏見が強すぎるため、女性が権利を主張することが、男性嫌悪に繋がってしまうことが問題である」と述べています。
そもそもフェミニズムの定義とは、男性も女性も、社会的に平等であるべきという考え方で、男性はこうあるべき、女性はこうあるべきという、ステレオタイプから自由になろうというものです。
ジェンダー格差をなくすために、エマは男性に協力を呼びかけるキャンペーン「He For She」も立ち上げました。
また、私が本書の企画を考えていた時期は、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプが政権を競っている時期でした。その際、ヒラリーが選挙演説で語った「私たち女性はまだ、見えないガラスの天井に阻まれているのです」という言葉が印象的で、この本のタイトルを思いついたのですが、結果、2016年11月8日に大統領選が行われ、トランプが勝利しました。
落選したヒラリーは、支持者に向かって「(大統領という)最高で最も困難な『ガラスの天井』は打ち破れませんでした。しかし、いつか誰かが、私たちが考えているよりも早く達成することでしょう」と語りました。
エマ・ワトソンがスピーチした通り、日本でもフェミニストが『男性に負けじと、性差に目くじらを立てるモテない女性』というイメージを持たれていることを感じます。
実際にこの本の取材を進める中で、著名なフェミニストに会いましたが、権利の主張ばかりして利己主義で周囲を振り回すので、「こういう人がいるからフェミニストが誤解されるのでは?」と、感じることがありました。
「いいかい? 君はまだ若いけど、将来、正しいだけの女にはなるなよ」
昔、私にそう教えてくれた、洒落たオジサマがいました。
正論を振りかざすのではなく、男女共にそれぞれの特性を生かして協力し合える社会をつくること。
それが21世紀のカスタマイズされたフェミニズムだと思います。
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