【41年前の今日:朴正煕(パク・チョンヒ)韓国大統領暗殺】嫌韓も韓流好きもパク大統領を知れば、その根っこは同じ『朴の不時着』《今日はニャンの日》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【41年前の今日:朴正煕(パク・チョンヒ)韓国大統領暗殺】嫌韓も韓流好きもパク大統領を知れば、その根っこは同じ『朴の不時着』《今日はニャンの日》

平民ジャパン「今日は何の日」:6ニャンめ

■リアリズムの思考を忘れたジャパン

 朴正熙(パク・チョンヒ)は人物像も功罪も、評価が真っ二つに分かれる。 清貧と腐敗、愛国と売国、韓国中興の祖と血にまみれた軍事独裁者、そのいずれもが真だろう。
 反日感情が蔓延する韓国国内では何かにつけ親日と糾合される。軍事クーデターで政権を獲った朴正熙は、戦後日本の平和礼賛メディアによって「軍人出身」「独裁者」というレッテルが貼られた。日本での正当な評価は受けられなかった。
 政権与党・軍人=悪い人野党・民主化運動家=いい人という単純化、記号化の中で、金大中(キム・デジュン)や金泳三(キム・ヨンサム)があたかもスターのように扱われていた。
 パク・チョンヒ体制において反体制派は逮捕、拉致監禁、拷問、暗殺工作、公職追放と、徹底的な弾圧にあったが、同時に朴正熙も常に北の工作員に命を狙われていた。暗殺5年前の1974年には在日韓国人青年・文成光(ムン・セグァン)の襲撃を受け、大統領夫人は彼の眼前で射殺されている。
 やるか、やられるかの世界は、戦後日本には無縁だ。

朴正煕の子であり、韓国女性初の大統領となった朴槿恵(パク・クネ)。2014年3月25日、米大統領バラク・オバマ、内閣総理大臣安倍晋三とともに(写真:パブリック・ドメイン)

 

 東アジアの緩衝地帯であり続けてきた朝鮮半島は、中国の冊封国(さくほうこく)として数千年にわたって属国の地位に甘んじた。日本による併合・植民地時代を経て、第二次大戦後の冷戦構造で米ソによって背骨ごと真っ二つに分断された。日本に独走させないためにも、アメリカは韓国を日本のコピーとして育てた。
 地政学上の朝鮮半島の厳しい立ち位置は、日本列島とは大きく異なる。
 おかげさまで、こちらは何度も助かっている。ジミー・カーター大統領の人権外交時代、朴正熙はそれを内政干渉ととらえ、アメリカとも対等に渡り合おうとした。
 在韓米軍撤退を示唆されたときは、独自の核抑止力をもつことを目指し、核兵器開発、ミサイル防衛開発を始めた。
 核武装を準備してきたのはキム一党だけではない。アメリカ、ソ連・ロシア、中国という核超大国のハザマにいる南北朝鮮(そして、日本)が核武装を試みることには、何の不思議もない。むしろ、無頓着な日本こそ不思議だ。原爆2発の呪いと犠牲者の祈りは、核攻撃の脅威に対する感覚を麻痺させ、リアルの思考を止めてしまった。

■エンタメ完勝韓国の「最大のタブー」とは

 時は移って暗殺から41年、段階的に民主化された韓国はIT先進国となり、2019年アカデミー賞4部門獲得映画『パラサイト』、ネットフリックス(日本)1位『愛の不時着』、ビルボード1位「BTS」と、エンタメでも、アニメとゲームとカワイイ頼りのクールジャパンに完勝している。
 一方こちらは猫も杓子も脊髄反射の嫌韓だ。ディスれば売れるシノギのために、無節操に嫌韓本を出す。安っぽいポルノ同様、中身は全部同じだ。

 いま世界は新たな米中全面対立化のハザマにあり、歴史の教科書で過去を弄ってもそこに答えは無い。

 依然北朝鮮と対峙する日韓両国だが、両国政府と御用メディアに煽られて、感情世論の対立は高まる。トンデモ北朝鮮の深刻な脅威には麻痺して、日韓はルーティン化したディスり合戦でストレス発散だ。慰安婦と徴用工、どうでもいいゲージツ展覧会やくだらない銅像をどこに建てた、置いた、撤去した、資産を現金化する、なら事務所を差し押さえだと喧しく姦(かしま)しい。いずれも75年以上も前の話の蒸し返しでウンザリだ。平民には1円の得もない。

 蒸し返し合戦をしたければ、韓国最大のタブーを突けばよい。

 朝鮮戦争のさなかにおきた軍警自警団による大量虐殺として悪名高い「保導連盟事件」がある。フォンニィ・フォンニャット、ゴダイ、タイヴィン、ハミの虐殺といった、ベトナム戦争での数多の鬼畜大宴会もきちんと調べるがいい。よその国の過去をあげつらうことが大好きな清く正しい国際社会に晒したらいい。

■111年前の今日、暗殺された日本人リアリストとあの世で一献⁉️

韓国統監時代、韓国の民族衣装を着て記念撮影におさまる伊藤博文(写真中央)。前列左から2番目が梅子夫人(写真:パブリック・ドメイン)

 

 死刑執行人もまた死す。北の工作を受けた在日韓国人青年に目の前で妻を殺され、自らは腹心に暗殺されながら祖国復興の志を貫いた朴正熙は、いまの日本と韓国を見て何を思うだろうか。

 中国はガチで新しい世界秩序を作ろうと完全に本気だ。アメリカの民主主義とやらは、とうとうぶっ壊れ始めてエンタメ化が止まらない。その米中どちらにも、どっぷり依存したまま何もできず、金王朝の核武装を拱手傍観だ。政治とメディアと世論の対立で、クズキャラ同士のプロレスに興じる日本と韓国を、ただ情けない思いで見ているかもしれない。

 しかし、朴正熙はリアリストだ。

 あたかも100年前の「全般的危機」に戻ろうとするかのような、この世界だ。
 南北朝鮮統一のきっかけとなる、次の戦争を待ち望んでいるかもしれない。あるいは、南北分断が続くことをむしろよしとして、見守っているかもしれない。

 朴正熙が暗殺されたその日から遡ること70年前(いまから111年前)の今日、1909年10月26日、大日本帝国初代首相で初代韓国統監、伊藤博文が朝鮮人青年・安重根(アン・ジュングン)にハルビンで暗殺された。世紀の「リアリスト」同士は、いま、あの世で少し苦いマッコリを酌み交わし、誰が得をするかのリアルに気づかず、犬と猿のようにいがみ合う子孫たちを、歯がゆい思いで見ているかもしれない。■


猫島カツヲ

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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