圧巻の県大会制覇。聖光学院「二人の監督」が見据える最強チーム
東北の頂を取るために必要なものとは
総合力でここ10年でトップのチーム
この秋のキーワードは「顕在化」。
聖光学院の斎藤智也監督は、その狙いについてこう説いていた。
「選手たちの能力は高い。まだ仕上がっていないけど、可能性を感じている。秋にできるだけたくさん試合を積んでいけば”顕在化”がより出せる。非常に楽しみではあるね」
秋季県大会。聖光学院は、文字通りチームの力を顕在化させた。とりわけ、準々決勝からの3試合は圧巻だった。
福島商高との試合は、大技、小技を織り交ぜ10-0の5回コールドと終始相手を翻弄した。湯本高との準決勝では、好投手左腕・椎名孔智の外角球に狙いを定め逆方向への打球を徹底。こちらも11-0で退けた。光南高との決勝は、準決勝まで2試合連続完封と好調を維持する左腕・小椋瑠偉をノックアウトするなど15安打9得点。守りでは背番号10の高坂右京が8回2失点と、投打がかみ合った。
5試合で42得点と打線が機能し、投手陣も高坂と背番号11の衛藤慎也、エースナンバーを背負った抑えの上石智也が計3失点にまとめた。まさに、強さを顕在化させた勝利。秋3連覇を果たし、斎藤監督は満足げな表情を浮かべながら、新チームの戦いを称えた。
「秋の大会は新チームになって初めての公式戦だから、船出の見極めが難しい。最初は『どうなるのかな?』と思っていたけど、秋にしてはよく打ち、ピッチャーもやれることを徹底できていた。そこは評価できるかな」
昨年までも結果は残していた。だが、今年はより完成度の高さが窺えた。チーム打撃に投手の安定感はもとより、グラウンドでの立ち居振る舞いも大人びているのだ。
光南高との決勝戦でこんなことがあった。5回の攻撃中に相手捕手が負傷すると、三塁ベースコーチの水光燦太郎がすぐさまキャッチャーマスクを拾い、コールドスプレー片手に心配そうな視線を送っている。そして、捕手がベンチへ下がると自らも後を追い、他の選手にマスクを渡す。
野球、そして選手たちのメンタル。このチームは、それが早い段階から成熟している――そう感じた。
「試合の対応力は歴代でもトップクラス。精神性も、夏までを含めれば2007年や10年もいいチームだったけど、秋の時点での総合力で言えば、今年がナンバーワンだと思う」