作家・森博嗣 言葉の「定義」づけがすごい
本のプロが読む、森博嗣『道なき未知』(八重洲ブックセンター 内田俊明さん)
「本書は本質を見極めようとする言葉の宝庫だ」
――八重洲ブックセンター 内田俊明
「感情的な表現を排除して、理屈で述べることも重要であり、また、自分の立場や自分の利益を基盤とした理屈でないことが、説得力を増す。そういったことを考えることが、いわゆる「思想」というもので、ぼくは行動よりもこちらの方がずっとレベルが高く、品があり、人間的だとイメージしている。」(112ページ)
「思想」という言葉を、これほど過不足なく定義づけた表現を、わたしは過去に知らない。本書はこういう、本質を見極めようとする言葉の宝庫だ。だからといって堅苦しく厳密な生き方をしようというのとは違う。深い思索の一方で、森氏は時間をかけて庭園鉄道を造るという、無駄な贅沢を満喫している。考え続け成果をあげてきた人だからこその余裕であり、憧れる。
言葉を使うこと、そして考え追究することを職業としてきた森氏ならではの、エッセンスが凝縮された一冊だ。
(八重洲ブックセンター 内田俊明)
本作の内容一部は以下でお読みいただけます。
【第38回 言葉より数を見る】
【第39回 「甲斐」VS「やすい」】
【第40回 掃除をした人は綺麗に見える】
【第38回 言葉より数を見る】
【第39回 「甲斐」VS「やすい」】
【第40回 掃除をした人は綺麗に見える】
(著者プロフィール)
森博嗣 もり・ひろし
1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。以後、続々と作品を発表し、現在までに300冊以上の著書が出版され人気を博している。小説に『スカイ・クロラ』、『ヴォイド・シェイパ』、『ダマシ×ダマシ』、『青白く輝く月を見たか?』など。エッセィに『自分探しと楽しさについて』、『小説家という職業』、『科学的とはどういう意味か』、『孤独の価値』、『作家の収支』、『夢の叶え方を知っていますか?』などがある。