「今、この本に出会えてよかった」救われる一冊
本のプロが読む、森博嗣『道なき未知』(さわや書店フェザン店 田口幹人さん)
「『今』と『これから』に寄り添う一冊」
――さわや書店フェザン店 田口幹人
「もっと早く出会っていたら」そう思える本に出会うことは多かった。
しかし、「今、この本に出会えてよかった」と、思える本との出会いが少なかった。
『道なき未知』を読み終えたとき、素直に「今、この本に出会えてよかった」という言葉が湧き出てきた。
僕は、いままで本を読むことで、先達が築いてきた道がある事を知り、その道のどこかに自分の道を重ねようとしてきたのかもしれない。
四十歳を越えいい年になった。
いい年になったらというのは、一人に返される年齢になったらと考えると辻褄があう。自分というものが一人に返されてはじめて、本当に何ものになりたいのかという欲求が芽生える時期なのかもしれない。
全ての道は誰かが作ったことを実感し、その道を辿り続けるか、己の道を敷くのかという分岐点にあるのもまた、一人に返される時期なのだろう。
『道の先にある未知』には、何かがありそうな予感がする。
本書は、見えない先に想いを馳せることを忘れていたことに気付かせてくれた。
「今、この本に出会えてよかった」
その今は、僕にとっての今だ。
きっと、多くの方の「今」と「これから」に寄り添う一冊となるでしょう。
(さわや書店フェザン店 田口幹人)
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(著者プロフィール)
森博嗣 もり・ひろし
1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。以後、続々と作品を発表し、現在までに300冊以上の著書が出版され人気を博している。小説に『スカイ・クロラ』、『ヴォイド・シェイパ』、『ダマシ×ダマシ』、『青白く輝く月を見たか?』など。エッセィに『自分探しと楽しさについて』、『小説家という職業』、『科学的とはどういう意味か』、『孤独の価値』、『作家の収支』、『夢の叶え方を知っていますか?』などがある。