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安土城でも使用、城主の力を見せつける“ある構造”

外川淳の「城の搦め手」第40回

 桝形(桝形門)は、虎口の一種であり、馬出と同じように、重要な拠点を守りながら、敵に反撃を加えるために築かれた。その名称は、上から見た形状が四角い枡状であることに由来する。桝形門は、一の門と二の門という2つの門によって形作られていることを特徴とする。2つの門の間に閉ざされた空間を作ることにより、内部に侵入した敵を袋叩きにしようとした。また、閉ざされた空間は反撃のために城外へ出撃する城兵の待機空間としても利用された。

 桝形は、戦国時代の実戦のなかで進化していった。そして、織田信長が築いた安土城の鉄門が進化の到達点となった。それまで、桝形の防御ラインは土塁によって形作られていたのだが、安土城では石垣が利用されるようになり、その構造は格段に強化されたのだ。

駿府城東御門。隣接する静岡県庁からの俯瞰

 桝形は、強力な防御構造であるとともに、城主の力を見せつける仕掛けでもあった。たとえば、地方の領主が信長に拝謁するため、安土城を訪れたとする。彼らは、鉄門をはじめ、いくつかの桝形を通り、本丸の天守を目指す。すると、桝形の一の門と二の門の間の閉ざされた空間において圧迫感を抱く。そして天高く聳える天主への憧憬から、信長との実力差を痛感し、服従を誓うという流れになった。

 
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外川 淳

とがわ じゅん

1963年、神奈川県生まれ。早稲田大学日本史学科卒。歴史雑誌の編集者を経て、現在、歴史アナリスト。



戦国時代から幕末維新まで、軍事史を得意分野とする。



著書『秀吉 戦国城盗り物語』『しぶとい戦国武将伝』『完全制覇 戦国合戦史』『早分かり戦国史』など。



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