懐かしの500系新幹線でのんびり旅行
レッドウィングと500系新幹線「こだま」でゆったり“汽車旅”を楽しむ
広島からの帰路、「のぞみ」で一気に東京まで乗るのは面白くない。時間はたっぷりあるので、ひと工夫した旅を試みた。
まずは、山陽本線(在来線)に乗る。少し前には瀬戸内海の車窓を楽しむために呉線の観光列車「瀬戸内マリンビュー」を利用したので、山陽本線の通称「セノハチ」と呼ばれる山越え区間(瀬野~八本松)を通っていない。かつて、ブルートレインが健在だったときは、何度かセノハチを通っているのだが、早朝の寝ぼけ眼状態だったり、上りで闇の中を通過したりと、昼間に車窓をゆっくり楽しんだ記憶がない。というわけで、初乗車のような気分で、糸崎行きの普通電車に乗り込んだ。レッドウィングという、去年あたりにデビューした新型車両で、クロスシート。しかもボックス席でないのが嬉しい。見知らぬ人と狭い空間で向かい合うのは窮屈だからだ。
広島駅から3つ目の海田市駅を出ると、呉線と分かれる。ここからが、何年振りかに通る区間である。山陽本線といえどもローカル色豊かな車窓が続いて行く。やがて、小高い丘の上まで延びるモノレールのようなスカイレールという交通システムの軌道が見えてくると瀬野駅に停車した。左手には、瀬野機関区跡という看板が立っている。D52形大型蒸気機関車のモノクロ写真が往時を偲ばせる。難所セノハチに立ち向かうため、優等列車もここで停車して後部に後押し用の機関車を連結していたのだ。あたりを見渡しても、もう何の痕跡もなく看板だけが機関区があったことを教えてくれる。
かつての難所も新型電車は、すいすいと走る。山越えの車窓も、あっけなく流れ去っていく。旅情が薄れたというよりは、便利になったというべきだろう。八本松駅でかつての難所区間は終わり、あとは淡々と山深いところを右に左にカーブしながら進んでいく。いつしか沼田川に沿って走るようになり、広島駅を出て1時間15分ほどで三原駅に到着。ここで下車する。
三原駅で降りたのは、山陽新幹線に乗り換えるためである。時間はたっぷりあるとはいっても、さらに大阪方面まで在来線を乗り続けていく時間はないのだ。
山陽新幹線といっても、昼間の三原駅は、1時間に1本「こだま」が停車するだけ。東海道新幹線の小駅でも1時間に2本「こだま」が停まるから、はるかにのどかである。乗換時間は50分程あったので、駅裏の三原城跡あたりを散策した。城跡の一部が新幹線の高架橋に食い込むように建っていて、なかなか興味深い構造である。
発車15分程前に新幹線ホームへ上がると、列車到着前に何本もの「のぞみ」「さくら」が猛スピードで通過して行った。対面ホームの間にある通過線を走っているので、ホームに立っていて危険ではない。
やっとのことで到着した列車は、500系使用の「こだま」である。前もって車両のことは調べておいて、わざわざこの列車を選んだのだ。
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