神社と寺院、お参り作法の違いとは? 参拝マナーの基本
初詣などの季節行事、例大祭や縁日などの祭事、初参りや七五三などの人生儀礼、あるいは嬉しい時や悲しい時など、社寺をお参りする機会はなにかと多い。神仏にちゃんと願いが届くよう基本を確認しておこう。
古来、日本人は正月などの季節行事の折や、七五三・新入学・受験といった人生の節目に社寺をお参りしてきた。また、悩んだ時や助力が欲しい時なども、社寺を参拝して生き抜く力をいただいてきた。そうした特別なことがなくても、折に触れて社寺を訪れると、仕事や日常生活で疲れた心を洗い清めてくれる。コロナ禍で先が見通せない昨今、こうした社寺参拝のよさが再確認されているようだ。しかし、こうした〝ご利益〞をいただくためには、正しい作法・マナーでお参りをする必要がある。神社や寺院をお参りするということは神仏の宮殿を訪ねるようなもの。失礼があったらご利益が得られないばかりか、罰があたることにもなりかねない。
もっとも、作法といっても、そんなに難しいものでも堅苦しいものでもない。参拝の作法・マナーとは神社のご祭神や寺院のご本尊に対して崇敬の気持ちや敬意を示すためのものであるから、なによりもまず敬神・崇仏の気持ちをもつことが大切。そうした気持ちでお参りをすれば、おのずと作法に準じた行動ができるようになる。
昔の人は参拝前には潔斎(けっさい)といって穢れを避けた清浄な生活を送り、さらに海や川に身を浸して清める禊(みそぎ)をした。神仏がおられる境内を汚さないためだ。今はそこまでする必要はないが、境内を汚したり騒がしたりしないよう心がける、これが作法の第一歩といえる。
境内に入ったら、まず手水舎で手と口を清める。これは禊に代わるお清めの作法で、日々の暮らしの中で無意識のうちに犯している罪穢れをこれですすぐ。なお、寺院によっては常香炉の薫煙でお清めをするところがあり、これによって仏様の智慧がいただけるともいう。
手水がすんだら本殿または本堂に向かうが、参道の中央(正中)は神仏の通り道なので、通らないようにする。
拝礼は、神社なら二拝二拍手一拝、寺院なら合掌低頭(合掌して頭を下げる)を基本とする。神社によっては四拍手とすることもあり、寺院も宗派独特の礼拝法があったりもするが、この作法でお参りをすれば失礼はない。くわしくは神職や僧侶に尋ねてほしい。
【参拝マナーの基本】
神社
1 鳥居で一礼
鳥居から内側は聖域。神様がおられる場所に足を踏み入れるのであるから、敬意を表して軽く頭を下げるのが礼儀。境内から出る時も、本殿のほうを向いて一礼をしてから退出する。なお、参道の中央はなるべく歩かない。
2 手水舎でお清め
境内の入口近くに手水舎があるので、ここで手と口を清める。日本の神様は心身の穢れを嫌うので、神前に進む前に手水で穢れをすすぐ。柄杓1杯で左手、右手、口、左手、柄杓の柄の順にすすいでいく。
3 本殿への拝礼
神社によっては本殿のご祭神以上に境内社が信仰を集めていることもあるが、まずは本殿への拝礼を行う。本殿の前に建つ拝殿に至ったら、賽銭を納め鈴を鳴らし二拝二拍手一拝で参拝。二度深く頭を下げ、胸の前で二度手を叩き、もう一度深く頭を下げる。より丁寧にお参りしたい時は、社務所に申し込んで昇殿参拝(拝殿に上がっての参拝)をする。
寺院
1 山門(総門)で一礼
神社とは意味合いが少し異なるが寺院の境内も聖域なので、立ち入る前に一礼をする。寺院のご本尊に向かって頭を下げる気持ちで。なお、寺院の正門を山門(三門)というが、寺院によってはその前に総門があることも。
2 手水舎・常香炉でお清め
手水作法は神社から取り入れられたもの。作法は同じ。常香炉は参道に据えられた大型の香炉で、香の薫煙で身を清める。香は仏への供物であるが、その芳香で清める力もあるとされる。粉末の香を身に塗る塗香もある。
3 本堂で拝礼
賽銭を奉納し、鰐口を鳴らし、合掌して頭を下げる。唱えごとは宗派によって異なるので自信がない場合はお坊さんに尋ねてからすること。堂内に上がれる場合は一礼をしてから入ること。その際、帽子などはとる。なお、線香や灯明(ローソク)を奉納する時は、後の人のことを考えて、なるべく奥の方に据えるようにする。
(『一個人』2021年冬号より抜粋)