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【教育×デジタル】進みはじめた教科書のデジタル化、その課題と責任

第58回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■2025年までの移行を決めた政府

 いったい、何のための基準だったのだろうか。
 小中高の児童生徒が使うデジタル教科書の使用について、授業時数の2分の1未満と定めていた基準を撤廃することが決まった。12月22日の有識者会議での合意を受け、文科省は来年度から制限なくデジタル教科書を使用できるように省令を改正していくという。

 2018年5月25日に参議院本会議で全会一致で可決、成立した『学校教育法等の一部を改正する法律案』(19年4月1日施行)によって、デジタル教科書が制度化され、「正式な教科書」として認められた。同時に、使用についても「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」という基準も決められた。
 デジタル教科書を使用するにはパソコンやタブレットなどICT端末を使うことになるが、長時間使用することによる目の疲れなど健康面に配慮されたからだった。

「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定されたのは、2020年4月7日のことだった。ここに『GIGAスクール構想』を加速するための予算も盛り込まれ、23年度までに整備する予定だった小中学校での「1人1台端末」が21年3月末までに実現されることになったのだ。これによって、デジタル教科書を取り巻く環境が変わっていく。
 教科書をデジタル化する試みは、特に2020年度から教科書会社を中心にして積極的に進められていた。1人1台端末が実現すればデジタル教科書の出番が増えると、教科書会社でも読んでいたからだ。
 ただし、デジタル教科書の大半は有料だった。正式な教科書は紙で、デジタル教科書はあくまで補助的な存在でしかなかったからである。

 しかし急遽、1人1台端末が前倒しで実現することになった。そこで10月6日の閣議後記者会見で平井卓也デジタル改革担当相が、教科書は原則、デジタル化すべきではないかと提案している。
 その前の10月2日に行われた萩生田光一文科相、平井デジタル改革担当相、河野太郎規制改革担当相の3大臣による教育のデジタル化についての会合が行われている。その席で、デジタル教科書への移行で3大臣は意見の一致をみている。それを踏まえて平井デジタル改革担当相が、移行を早めるよう促したことになる。

 12月18日に政府は経済財政諮問会議を開いているが、そこで2025年度までにすべての小中学校でデジタル教科書を普及する目標を新たに定めている。政府として、教科書を紙からデジタルへ移行する意向を明確にしたわけだ。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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