【忘れない命の教訓】阪神・淡路大震災26年「命を奪う3つの時間帯」——地震発生後、人はどのように時間を経過しながら亡くなっていったのか
地震大国日本_来たるべき大地震に備えてこれからの防災を考える
今後30年で高い確率で起きると予測される各地の大地震。
とくに首都直下地震は70%。死者2万を超え、経済損出は95兆円超とも達すると言われています。
都市直下型の地震の事例として26年前の阪神・淡路大震災から犠牲者の死因を検証し、「救えた命」の教訓と向き合いながら命と資産を守るための対策を考えます。
■26年前の悲しみの記憶 それは命を守るメッセージ
地震大国日本。今後30年で首都直下地震が起こる確率は70%。2014年に政府の地震調査委員会が過去22年間の8つの大きな地震を根拠に出した予測である。
しかし、この予測に対して具体的な震災への想定を「公助」予算として繰り込んだ防災対策は十分になされているとは言えない。国土を襲う地震は「等しく」社会を壊滅させると同時に「自助」で対処できない問題にもかかわらず「未知の大地震」は「私だけは、大丈夫だ」という正常性バイアスが働きやすいために棚上げされる傾向にもある。
だが、こうした大都市圏を襲う地震に対し、その防災を最大の教訓として私たちは学べることも確かである。
あの時から26年── 「阪神・淡路大震災」の教訓である。
1995年1月17日午前5時46分、兵庫県淡路島北部を震源とした兵庫県南部地震が発生。戦後で初めて大都市を襲った震度7の地震は6434人の尊い命を奪った。
あの日、どのように人は亡くなっていったのか。
震災犠牲者の78・2%にあたる5036人の死亡診断書(以下、「検案書」)から私たちが直面する可能性が高い都市直下型地震における死亡リスクの見える化を通じて議論する。その資料とし
て『震度7 何が生死を分けたのか』(NHKスペシャル取材班・著、弊社刊)をもとに、改めて大地震への備え、対策への警鐘を鳴らしたい。
■3つの時間帯の異なる死への優先すべき対策は見えている
当時の大地震で死亡原因について同書は「検案書」をもとに分類し、その対策の指針を示した。その結論を単純化すれば、人は「3つの時間帯」で異なる亡くなり方をする。そして、対策の答えはすでに出ている。
①地震発生直後の窒息死→建物の耐震化(耐震診断・補強)
②地震発生1時間以降の焼死→通電火災への対処「感震ブレーカー」の設置
③地震発生5時間以降の衰弱死→救助を阻む渋滞をなくす(車の使用を避ける)。
しかし、こうした対策がいまだに進んでいないことが問題なのである。
■多くの生命を奪った窒息死耐震化対策で救える命はある
では、最も多くの命を奪った建物倒壊による「窒息死」とは何であるのか。
阪神・淡路大震災において地震発生直後の犠牲者全3842人の90%にも及んだ建物倒壊による「圧迫死」と言われているもののなかで、「窒息死」がその61 %、2116人も占めることである。
つまり、それは「即死」ではないのである。
即死と窒息死の違いとは、「死に至るまでの時間」である。窒息死は呼吸が止まって3〜5分後に、脳に不可逆的な損傷が生じ、死に至るのである。すなわち、2116人の犠牲者は、地震発生直後から「ある程度」の時間は生存していた可能性が高いのだ。
もしも、耐震化対策を講じていれば「救える命」もあったと考えられるのだ。